こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。本日は、2021秋冬シーズンに本格展開を開始した、GUのリアルレザーシューズについて。
確かに、3~4,990円で本革を使用した靴を出せるのは凄いです。
革はコストがかかる素材ですが、GUのリアルレザーシューズは、1万円くらいのビジネスシューズと互角くらいの実力はあります。
しかし、「ビジネスシーン使いでは、特にカッコよくはならない」ということはお伝えしなければなりません。
革靴は小手先のパッと見では全く誤魔化しがきかない、シビアなジャンルのアイテムだからです。
GUのリアルレザーシリーズは、カジュアル使いにはそれなりに良いとは思いますが、あくまで日常使い向け。
特に、フォーマル用のストレートチップは避けた方が良いと思います。
「そうか、分かった」で、ご納得いただける方はこのままブラウザバックしていただいても結構ですが、私はプロで何の根拠もなく意見しているわけではないので、一応詳細の理由も書かせていただきます。
また、後半部分では代替案として、ビジネス(カジュアル)に使用にも一応耐えられる、1万円前後のビジネスシューズをご紹介させていただきました。
コスパも大事だけれど、コスパだけで全てを済ませちゃいけないと思います。それを念頭に置いた上で、読んでいただけたら幸いです。
(追記)今回の記事は2021年時のビジネスシューズが中心となっていたときのものです。2023年~のカジュアルシューズ中心となったレビュー記事は、こちらをご参照ください。
GUのリアルレザーシリーズの評価/評判は?プロがレビュー!
本革の靴における、本来あるべきメリットとは?
GU より引用
そもそも、本革のアイテムを使う意味とは何でしょうか?
昨今、肉牛の飼育や革の製造工程での環境負荷なども囁かれていますが、ここではあくまで、プロダクトとしての本革を使う意味を問うてみたいと思います。
目的が「本革を使用している話題性のみ」では、ユーザー目線に立った商品開発とは言えません。
合成皮革では得られない、質感や機能性を十分発揮できてこそ、本革である意味があります。
本革でしか得られない要素としては、例えば
- “本物であること”の素材感や高級感
- 繊維質素材による吸湿性
- 長年愛用できる素材特性
など。
つまり、最低でもこれらが確保されなければ、本革の靴である価値が低いということです。
一方、GUがリアルレザーシューズを開発した経緯としては、
リアルレザーの革靴は、顧客の声を反映した商品開発プロジェクト「GU SHOES LAB」において、要望が多かったことから開発に着手。ジーユーでは2015年頃から合皮の「アクティブスマートシューズ」を展開していたが、利用者から「シワが気になる」「安っぽいツヤ感を改善してほしい」「長く履き続けると劣化が気になる」といった声が多く寄せられていたという。こうした顧客の意見を受けて、合皮のようにシワが悪目立ちせず、手入れすることで劣化せずに長持ちするリアルレザーの革靴の開発を2019年頃にスタートした。2021年春夏シーズンからグルカサンダルとダービーシューズを超大型店とオンラインストアで販売しており、秋冬シーズンにはさらにラインナップを拡大した。
FASHION SNAP. com より引用
とのこと。
本当に「シワが気になる点」「安っぽさ」「劣化」に対して真摯なモノ作りがされているのでしょうか?
併せて、検証してみましょう。
アッパーの革質|キメは細かくはない、ビジネス使いは厳しい
第一に、“本物であること”の素材感や高級感について。
結論、合皮と違った素材感を感じることはできますが、肝心の本革のクオリティは高くありません。
3,990円の革に使わるものとしては結構良い・・・というか、あまり他に例がないくらいの価格です。
それでも、廉価品の域は出ない見た目の表情です。
ビジネスシューズとして捉えた場合、合皮であろうが本革であろうが、「ドレス感を引き立てる見た目の結果」が重要です。
そして、残念ながらドレス感を引き立てる靴ではありません。
Image Photo by GU
確かに、合皮の「安っぽいツヤ」はありませんが「安っぽいキメの粗さ」はあります。
耐久性を重視した、成牛の革を使うワークブーツなら意匠性としてアリだと思います。
しかし、ドレスシューズとして発売しているのなら、残念ながら良い靴には見えません。
見た目の高級感は、コーティングされたガレスレザーや合皮の方がマシだと思います。
Image Photo by GU
そして、トウ(つま先)に芯が入ってません。
通常の革靴には入っているのですが、GUのリアルレザーシューズでは省かれています。
芯が入っていないということは、型崩れを起こしやすく長年の使用に影響が出るばかりか、ワックスで磨いてつま先を光らせても割れてしまいます。
紳士靴愛好家の間では周知の事実ですが、革質が良くない上に、つま先まで光らせられないビジネスシューズを「良い靴」には見せられません。
縫製のピッチ|GUクオリティで雑雑の雑
そして、アッパーのパーツ同士やライニングと縫い合わせている縫製に関しても、及第点に達していません。
同じ親会社でもGUとユニクロの間には、縫製の丁寧さにかなりの差があります。
はっきり言えば、GUは製品全体の縫製が雑です。
もちろん、リアルレザーシューズに関しても同様です(GUは非常に限られたコストでやっているので、仕方ない部分ではあります)。
Image Photo by GU
クオリティがカッコよさに直結する革靴界では、通用しない部分は否めません。
キャップ部分のステッチは特に目立つため、最低でもストレートチップなどのモデルは避けた方が吉です。
ガチャガチャに縫われた靴のピッチ&上質とはいえないアッパーは、特に、滑らかな梳毛で織られたテーラードパンツの裾から悪目立ちします。
もっとも、これはリアルレザーシューズの中でもビジネスユース向けではないモデルや、パンツの裾から縫製が目立たないタイプの靴を選ぶことでカバーできる点ではあります。
以上の理由から、トータルで「“本物であること”の素材感や高級感」という点では不合格。
合皮のビジネスシューズを差し置くほどの、特別な高級感は得られません。
ライニングはメッシュ素材&合皮、吸湿性は確保
次に、繊維質素材による吸湿性&長年愛用できる素材特性について。
まず、吸湿性に関しては合格点をあげられます。
(近年は合皮も通気性や吸湿性を確保した素材はありますが)ライニングがメッシュ素材になっています。何より重要なインソールも運動靴のような合成素材で、ある程度“蒸れ”を逃がしてくれます。
欲を言えば、インソール部分が吸湿性の高い本革であれば、足の蒸れ感が一層軽減できたと思います。
ただ、“長年愛用できる素材特性”に関しては不合格です。
というのも、ライニングに使用されている革は合成皮革で、本革ではないからです。
「リアルレザーシューズ」のリアルレザーとは、どうやらアッパーのみを指しているようです(HPもライニング素材に言及はされていません)。表記義務はないのですが、ライニングも立派な靴の構成要素と考えると不誠実な気もします。
そして、GUのリアルレザーシューズの内側に使用されている合皮は数年で劣化するもの。ソールの交換が不可であることも含めて、長年の使用には無理があります。
ソールは合成底|ソール裏のデザインが・・・
デザイン性にも関係する項目ですが、GUのリアルレザーシューズは、ソール裏の素材およびディティールに関しても“安っぽさ”を演出してしまっています。
リアルレザーシューズのソールは、「合成底」という合成ラバーで作られています。
こちらも本格的な革靴だと吸湿性重視で作られたり、ラバーソールならば「ビブラム」や「ダイナイト」といったブランドソールもあります。
この点に関しては、合成底は良いチョイスだと思います。
耐滑性や水に強いというメリットがあるため、革靴ビギナーにも歩きやすい素材です。
タウンユースだけでなく、オフィサーシューズ(軍の将校用)にも採用されています。
Image Photo by GU
しかし、ソール裏のステッチを象ったデザインは要りません。
これは、「グッドイヤーウェルテッド製法」といった本格的な紳士靴に導入される、ソールとアッパーを縫い付けることで見える(ものもある)ステッチを模したもの。
GUのリアルレザーシューズは、接着剤で足の甲を包むアッパーとソールをくっつける「セメンテッド製法」ですので、全く意味がないイミテーションです。
イミテーションステッチはGUだけでのものではないのですが、“なんちゃって風”に見せて、しかもバレバレ。
逆に安っぽく見えませんか?
Image Photo by GU
ちなみに、GUとアンダーカバーのコラボブーツは、「偽物のステッチ」がありません。
確かに、セメンテッド製法は安価な靴に採用されることの多い製法ですが、(長年の使用には耐えられないものの)それ自体を恥ずべきとは思いません。
むしろ、デザイン性にもならないイミテーションこそが安いことに対し、最も卑屈になっているディテールになっているように思えます。
Image Photo by GU
その他、GUにはコバの出し縫いステッチ(写真の黒い靴底と茶色の部分の境界あたりの点線状で縫ってある風の部分)を模したモデルもあります。
こちらも、写真からでも分かるレベルで意味のないイミテーションです。
昨今、そこにあるものの意味を知らない人が「高見え」というワードを乱用しているきらいがありますが、見る人が見れば分かります。
デザイン性というのは、「そこにあるものの意味を問う」連続作業でもあります。
却ってカッコ悪いから、こういったディテールはやめてほしいですね。
結論|カッコよく見せられない&長年の使用は無理がある
結論としては表題の通り、GUのリアルレザーシューズは、特別感を演出できるレベルのシリーズではありません。
繰り返しますが、残念ながら革靴は、小手先のパッと見た目だけではどうにもならない世界です。
人間の足形は年月が経ってもほぼ変わらないので、時代を経ても、履きづらく歩きづらい靴は選ばれません。トレンドの変遷も非常に緩やかで、同じモデルが(マイナーチェンジを繰り返しつつ)何十年と発売されています。
メンズ服の中でも、スーツと革靴は、カッコよさと品質の高さの相関関係が高いジャンルです。
「○○ブランドだから」「デザイナーが××だから」で選ぶべきジャンルではありません。
GUのリアルレザーシューズの「高見え」は、せいぜい1万円クラスです。
3万円のビジネスシューズとは戦えないレベルです。
もっとも、革靴の入り口として悪くはない選択肢であることは、間違いありません。
3,990円ですので、1万円レベルと戦えるだけでも十分凄いんですけれども!
GUやユニクロとなると、その辺りの感覚がバグってしまいますね。
じゃあ、どんな革靴なら安くてそこそこなの?1万円前後のおすすめ
“コスパ”は消費者視点で重要ですが、コスパだけであなたがカッコよくなるわけではありません。
だからこそ、革靴に関しては、もう少し予算を確保した方が良いと思います。
そこで本項では、比較的マシに見える「1万円程度で購入できるオススメの革靴」をご紹介させていただきます。
代替案を全く示さないのも良くないと思いますので、ぜひ参考にしてください。
まず、
- グッドイヤー・ウェルテッド製法
- レザーソール
のものは、選択肢から除外しました。
いずれも、高級な革靴に採用されることの多い仕様です。
しかし、廉価な価格帯の靴に採用すると、革や作りの丁寧さに犠牲となる部分が生まれてしまうからです。
実際に、1万円前後で採用されている靴も見たことがありますが、革や作りがめちゃくちゃなモノだったりします。よって今回は、合成底&セメンテッド製法でチョイスしました。
ハルタ(HARUTA)711 プレーントウ
Image Photo by HARUTA
まずは、ハルタ(HARUTA)「711」というプレーントウの靴。
ハルタはローファーで有名なあのメーカーで、学生時代にお世話になった人も多いのではないでしょうか。
実際、ハルタは(前身の春田靴商店も含めると)創業100年を超える老舗靴メーカー。
大人向けの靴も幅広く手掛けており、写真の「711」は40年以上のロングセラー商品です。
アッパーは、本革に樹脂でコーティングされたガラス革&ソールは合成底。
(写真の通り)踵の造りは甘いですが、6アイレットのプレーントウの重厚感による高級感が、GUのリアルレザーシューズより1歩2歩、リードしています。
Image Photo by HARUTA
定価は15,400円(税込み)とやや高めですが、各大手ECサイトでは若干安くなっていることもあります。
グリーンレーベルリラクシング レザー プレーン トウ シューズ V3
Image Photo by UNITED ARROWS
続いては、グリーンレーベルリラクシングより、定番のレザー プレーントウ シューズ。
こちらは、本当の定価1万円程度(11,000円)。使われている素材はGUと大差ありませんが、各部分がキチンと良く見せられるようにブラッシュアップされています。
アッパーはつま先に芯が入っており、磨くと光りますし、ステッチも大味ながらダブル(二列)で縫われているので、(あまり)チープな感じがありません。
Image Photo by UNITED ARROWS
ソール裏も余計なデザイン(イミテーションステッチ)がなく好印象。これでいいんですよ。
1万円×本革であれば、「フォクスセンス」も選択肢に入る
Amazonより引用
手軽に買える&コスパの高さを1万円程度の予算で求めるのであれば、中国のフォクスセンスというブランドもオススメ。
販売ページの日本語は少々不自然なものの、GUのリアルレザーシューズと比べて一歩二歩、リードした革靴を展開しています。
こちらもラバーソールなので、雨の日なども安心です。
本革の他にも、合皮で作られたモデルは6,000円前後で購入可能です。
上記記事では、ラインナップや実際に購入してみた画像も載せているので参考になれば幸いです。
【ちなみに】リアルレザーシリーズの中でオススメを挙げるなら
他社商品も含めて検討してみた結果、どうしても予算的にGUのリアルレザーシリーズの中で検討したいあなたへ。
圧倒的な低価格ですので、気持ちは分からないではありません。
そこで、リアルレザーシューズの中で比較的、粗が見えにくい「高見え」するものを選出しました。
ソール裏のイミテーションステッチは諦めるとして、その他の要素で、なるべく“良く見せられる”リアルレザーシューズをピックアップしてみました。
オペラパンプス
Image Photo by GU
まずは、オペラパンプス。紐も切替えもないので、縫製の粗が目立ちにくくオススメです。
とはいえ、ドレスシューズというよりビジカジやオフの日用です。
無地のスーツ×ソリッドタイなどと合わせるのは、ちょっと無理があるかもしれません。
また、紐がないのでサイジングはシビアです。購入前に必ず試着してください。
サイドゴアブーツ
Image Photo by GU
サイドゴアブーツも同様の理由。私も購入してみましたが、甲部分の縫製箇所が少なく、粗が目立ちません。
オペラパンプスが春夏なら、サイドゴアブーツは秋冬用でしょうか。
ただし、サイドゴア&レースアップブーツは1cm単位でのサイズ展開しかありません。
サイズが合わなかったら、潔く諦めてください。
こちらも、ビジネスというよりはカジュアル~ビジネスカジュアルまで。ボリューム感もあるので、ビジネススーツとは相性が良くありません。
GUの「リアルレザーモカシンシューズ」も比較的良い
Image Photo by GU
こちらもカジュアルシューズですが、リアルレザーモカシンシューズは良作。
全体的にあまりオススメできるシリーズとは思っていませんが、モカシンシューズは別物だと思います。
モカシンシューズは“カジュアルなきれいめ”や「アメカジ」コーデをする人向け。
感動パンツや、レギュラー/スリムフィットジーンズとも相性抜群です。
ただし、こちらも1cm刻みでしかサイズ展開がありません。そして、あまりにクラークスのワラビーブーツにそっくりすぎます。ここは、早急に改善してほしいですね。
スエード素材も、比較的に粗が目立たない
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また、表革に比べればスエード素材もオススメ。
確かに、高品質なスエードは毛足が短く、触ったときの“ボソボソ感”が少ないのですが、ある程度は誤魔化しが効きます。
特に、こげ茶は“安見え”を和らげてくれます。
靴の磨き方が分からない方も磨く必要がなく、ブラッシングと防水スプレーのみでケアも楽。
ちなみに、スエード(suede)とは、革の裏面をサンドペーパーなどで起毛した革のこと(フランス語です)。元々は「スウェーデン(Sweden)の手袋」に由来しています。
というわけで、今回はGUのリアルレザーシリーズをご紹介させていただきました。
結論、どうしてもコスト重視で行きたい場合のビジネスシューズとしては良いかもしれませんが、カッコよく見せるという点ではあまりオススメはできません。
とはいえ、3,990~4,990円という予算では比肩する存在がないと思う&スニーカーに近い履き心地も、革靴初心者には良いと思います。
ぜひ、ご自身の価値観と照らし合わせて検討してください!
おしまい!
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