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ファッションという言葉の意味&指すもの|「モード」や「アパレル」との違いも解説

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こんにちは、しょるです。本日は「ファッションとは」について。

「ファッション」とは何となく使用されている言葉ですが、本当は“何を”、“どこからどこまでを”指す言葉なのでしょうか。

例えば、ファッションの世界には「モード」「アパレル」「服」といったさまざまな言葉がありますが、意味の違いもハッキリとはしていません。何となく使用している人が多いですよね。

また、日本国内だけを切り取っても「ファッション業界」とも「アパレル業界」ともいわれます。

同じように使用している方がほとんどですが、はたして、本当に同じ意味でしょうか?

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結論、答えはNO。

本日は、プロのファッションデザイナーがその違いを解説した後、改めてファッションという言葉の意味と範囲を解説します。

目次

ファッションとは≒「モード」であり、意味は「服装」

まず、「ファッション」という言葉について。

ファッションは、英語ではそのまま“fashion”、仏語では“mode(モード)”と言います。

(ファッションと同じく)「モードってなんだろう?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、基本的にファッションの仏語がmode(モード)です。

そして、ファッションの日本語訳は「服装」。「服」ではなく「服装」です。日本の専門学校、「文化服装学院」の英語名も「Bunka “Fashion” College」です。

一方で「服」は英語でclothes(クロウズ)、仏語ではvêtements(ヴェトモン)。ヴェトモンはブランド名にもありますね。

いずれも、「服」と「ファッション」「モード」は違う語句であり、言語としても明確に違う意味を持ちます。

「ひとはなぜ服を着るのか」 鷲田清一 著 (ちくま文庫)
created by Rinker

ファッション=「装」、つまり「ガワ」であり「スタイル」

「じゃあ、そもそも『服』と『ファッション』の意味はどう違うの?」と疑問に思われると思います。

先述の通り、「ファッション」と「服」の差は、服装の「装」の部分にあります。

そして「装」の意味は、

衣服をつけて身ごしらえをする。よそおう。「装をこらす」

とりつける。かざる。

コトバンクより引用

とあります。

つまり、「服」がモノ単体であることに対し、「服装」は“纏う「人」をベースにした視点である”という違いがあります。

ひるがえって、「ファッション」とは(本人含めた)全体の「装い」を指す言葉。トップスやボトムス、シューズといった個々のアイテムだけでなく、髪やメイク、歩き方や話し方といった「装い」すべてを指します。

ファッションとは、服そのものではなく「装う」こと。

そして、社会にはさまざまな「装い」が存在します。社会に生きる以上、外部からの「装い」から影響を受けないことは、不可能といっても過言ではありません。

一般的に、「ファッション」とは服の「装い」、つまり「服装」のことです。

しかし、広義では自分の周りの空間である家庭や地域など日常空間の「装い」、都市や国家の「装い」、価値観や技術革新、ビジネスによって変化するトレンドたる時代の「装い」も、実はファッションの一部です。

つまり、ファッションとは個人から地域、国家、世界全体へと波及し、“時を駆けうごめきながら波及する現象”および、その結果としての服装のことを指します。

Fashion is a style that is popular in the present. It is a set of trends that have been accepted by a wide audience. It is a complex phenomenon: psychological, sociological, cultural or economic points of view.

“Fashion as a Dynamic Process”より引用

ここでもう一つ、ファッションの本質には、人間の習性が垣間見られます。

具体的には、

  • 人と同じであることに安心感をおぼえ、共通言語とする性質
  • 「他人とは違う自分であること」によって、自己承認する性質

の、排反事象的な要素です。人間は皆、これらを個人の中に持ち併せているからこそ、ファッションが成立すると考えられています。

例えば、ドレスコードに見られる「服装のTPO」に合わせる行為は、「社会や特定のコミュニティに追随し遵守する」ファッションです。

一方、“人とは違うファッション”を提案したり身に纏うことも、「人と自己を差異化する」アンチテーゼとしてのファッション。

「コムデギャルソン」「メゾンマルジェラ」といったブランドは、「既成概念をぶち壊す」ことをテーマとしつつ、ポピュラーなブランドとしてのステータスも確立していますよね。

だからこそ、“ファッション”の意味は、「周りと揃えるドレスコード」と、「既成概念を打ち破る革新性」の双方を持ち併せるといえます。

そして、既存のファッションへの“アンチテーゼとしてのファッション”が生まれ、存在し、普及するからこそ、上記引用の「 a style that is popular in the present (今現在、人気のある様式)」が、とって代わられる。

このことが、ファッションにおける重要な現象であり、ムーヴメントとなります。

この「パラドックスの発生=ファッション現象」は、「時代の装い」や「環境の装い」に影響された結果として起こり得るもの。これが、トレンドが変遷する仕組みでもあります。

「モード」という言葉の特別感と「モード系」という虚構

 

モードというフランス語には「服装」に加え、「流行(の先端)」というニュアンスを強く孕んでいます。

もちろん“ファッション”も「流行」という意味で使用さますが、ファッションの中心地であったフランスの言語は、より“そのイメージやニュアンス”を強めていることは間違いありません。

「モード」は流行の最先端、さらにその頂点に位置する“点の先の先”を指します。つまり、(その時々にはあったとしても)普遍的な「モード系のデザイン」というものは、そもそも矛盾するのですね。

多くのメディアやSNSなどで、「モード系ファッションはこれだ!」というコンテンツもありますが、モードに一元的な視覚的回答を示すこと自体、矛盾に満ちたものです。

「モード系」という言葉によって「ヨウジヤマモト」や「コムデギャルソン」のようなルックをイメージさせる&することで安心感を得ていたとしても、そんなものは虚構でしかありません。

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また、「モード」の対義語は、原理的な意味での「ストリート」です。その辺の道で発生したような、従来の様式とは違った「お高くとまっていないスタイル」として誕生したジャンルです。

しかし、ここ数年間はハイファッションによるストリートがモード化するという、まさにモード(ファッション)の定義そのものが、(うごめく性質通りの)“ぐちゃぐちゃ”になった時代でした。

「アパレル」≒「衣類」、日本では「洋服(既製服)」を指す

次に、「ファッション(モード)」の意味と「アパレル」との違いについて。結論、「アパレル」という言葉は「衣類」そのものを示す言葉です。

アパレルとは元々「着せる」という英古語に由来し、転じて名詞の「衣類」「衣服」になりました。

「ファッション」と同じように使用されている現状がありますが、「服」がプロダクトであることに対し、先述の通り「服装」はモノ単体ではなく様式そのもの。

衣服。特に、既製服のこと。

転じて既製服業界・ファッション衣料の製造業者などをさす。

「―産業」

Oxford Languages

「アパレル」は、日本やアメリカでは服の中でも既製服を指します。テーラーやクチュリエが生み出す服は、アパレルとは呼ばないことも特筆事項です。

つまり、「アパレル」とは私たちが最も身近に触れられる「ファッションにおける必要ピース」。しかし、ファッション全体の意味における、ほんの一部に過ぎません。決して同じ意味などではないのです。

「ファッション」は、人間の心理や社会現象によって形成される

Fashion is a style that is popular in the present. It is a set of trends that have been accepted by a wide audience. It is a complex phenomenon: psychological, sociological, cultural or economic points of view.

“Fashion as a Dynamic Process”より引用

「ファッション」「モード」「アパレル」の意味の違いが分かったところで、ここではファッションの言葉の意味や性質を深堀するため、先述の引用をもう一度解釈してみようと思います。

後半部分の、“It is a complex phenomenon: psychological, sociological, cultural or economic points of view.”に注目してください。

日本語に置き換えるなら、「(ファッション=流行は)心理的、社会的、文化的、経済的な観点からの複雑な現象」とあります。

“Pace Layers Thinking”によるファッション階層の「うごめき」

英語が分かる方は、ぜひ視聴してみてください

ファッションの意味や定義として、「ファッションが複雑な(他の心理的、社会的、文化的、経済的、etc. )「現象」によって引き起こされる」という言及は、他のソースによっても同様に示されています。

有名なものとして、スチュワート・ブランドポール・サッフォによる、“Pace Layers Thinking”という発表を引用させてください。

The Pace Layers idea is illustrated by a simple diagram showing six layers which function simultaneously at different speeds within society. They range from Nature (the slowest) to Fashion (the fastest, shown at the top). As the layers progress, Stewart proposed, their differing speeds help make a society more adaptable. Cultures can be robust and healthy precisely because these layers come into conflict. Each level should be allowed to operate at its own pace, safely sustained by the slower levels below and kept invigorated by livelier levels above. Though originally conceived as a tool for thinking about society, Pace Layers has had broad influence as experts in other disciplines have applied its framework to their areas including consulting and systems thinking. Jeff Veen of True Ventures (formerly Adobe, Adaptive Path, and Wired) recently said: https://gigaom.com/2014/11/18/design-… that Pace Layers provides a vocabulary to think about the stacked layers of contemporary design. Phil Libin, CEO of Evernote, has called the Pace Layers chapter in The Clock of the Long Now “the most profound thing I’ve ever read.”

“Pace Layers Thinking”では、「社会」は上図の通り異なる6つの層(layer)によって構成され、それぞれが異なるスピードで同時に機能していると説明されています。

層(layer)とは、

  • NATURE(自然)
  • CULTURE(文化)
  • GOVERNANCE(統治プロセス)
  • INFRASTRUCTURE(社会基盤)
  • COMMERCE(商業)
  • FASHION(ファッション)

の6段階。

それぞれの層は独自のスピードで推移し、層ごとのスピードが異なることで社会の順応性を担保しています。また、下層から上層へ向けて、順に影響を及ぼしていくことも特徴です。

つまり、(一つだけ複雑に、またスピーディーに「うごめく」)ファッションへの適応および理解とは、下層5段階の動きや、背景知識の流れの把握も必要になるということです。

ファッションの「集団心理」とファッショ(束)、ファシズムについて

余談ですが、稀に「ファッションはファッショ(束)、つまりファシズムと関連している」という意見を述べる方がいらっしゃいます。

しかし、明確な関連性はありません。

というのも、「ファッショ」はラテン語の「fasces(束桿)」に由来する一方、「ファッション」はラテン語の「factio(作り)」に由来する語句。そもそも、語源が異なります。

確かに、ファシズムで有名なナチス・ドイツが国威高揚のために「ブランド」を活用したことは有名です。ナチスのNo.2であったヨーゼフ・ゲッベルスは「宣伝相」であり、今でいうマーケターでした。このことから、ファッションとファシズムは関連するという考えが生まれた可能性はあります。

「〇〇ブランドを着てる奴はダメだ」といった意見を散見します。

クリエイターの拘りなのか、ブランドを拠り所とする信者的発想かは定かではありませんが、ファシズム的な思想を孕んだ狭量さだと感じます。

良い・悪いの個人的価値観がダメとは思いませんが、最低限の「リスペクト」は必須ではないでしょうか。

「リスペクト」言葉は「尊敬」という意味もありますが、根底にあるのは「他者承認」です。

自身の価値観にはない存在を受け入れずとも認めること、ファッションの世界にも必要だとは思いませんか。自分が好きではないものも、大きなレイヤーから波及した人間社会の産物ですから。

あなたの好きなブランドやスタイルは、好きではないもののアンチテーゼによって生まれたものかもしれません。

【おまけ】コスプレは「ファッション」か?

結論、ファッションですコスチューム「プレイ」に興じる人間を表現したスタイルですから、ファッションの一部と言えます。

「架空の世界観に入り込む」という点では現実のレイヤーとは分断されているように思えますが、現実世界から生み出された「コマース」の層に属することは間違いありません。

「ファッション」には“社会を捉える力”も必要

今回は「ファッションとは」という定義を中心に、「モード」「服」「アパレル」といった言葉についても説明させていただきました。

「服が好き」というのは、ファッションにとって重要なことです。しかし、服だけ好きでも、ファッションのことは理解できません。

そして、ファッションに影響を及ぼす「見えないもの」を捉えられなければ、少なくとも「ファッション」においては、誰かのフォロワーにしかなり得ません。

もし、あなたが「アパレル」ではなく「ファッション」の世界に漬かりたいのであれば、身の回りの環境や地域、国そのものを見つめ、レイヤーを把握してみる行為が重要です。

あなた自身を構成している「レイヤー」を、現在過去未来に対して目を向け、自身の価値観を掴んでみてください。

そして、ファッション業界に入りたい人へ。

ただ「オシャレをする」「絵を描く」「ミシンを動かす」だけでも業界には入れます。しかし、今、本当に求められているのは、レイヤー的な背景から現象として捉えられ、考えられるクリエイターだと思います。

学校ではテクニックは教えてくれるでしょう。しかし、あなた自身に関わる背景は、教えてはくれません。

どうか、あなたに眠るかもしれない、豊かな感性と表現力を発現させてください。

おしまい!

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1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。
現在はデザイナーの他、日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援も行っています。
素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。



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