こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。今回は、イギリスの革靴について有名&おすすめブランドをご紹介します。
今もなお、革靴の中心地はイギリス(英国)です。
2000年代のクラシコブーム以降、スーツに関しては“イタリア勢”が優勢に思えますが、革靴に関してはイギリスが主役となっている勢力図は変わっていません。
「スーツはイタリア、革靴は英国」というのが、現在のお洒落の流れでもあります。
そして、この勢力図は今後もそう変わらないでしょう。
ちなみに、日本のファッションに英国靴が本格的に“入ってきた”のは1980年前後のこと。これは、戦後のメンズファッションの“お手本”が、アメリカから始まったことなどが理由として挙げられます。
しかし、決して「日本人に合わない」ということではありません。
ブランド的な知名度からしても、英国靴ブランドは(国産ブランド同様に)チョイスの中心にあります。
今回は、プロのファッションデザイナー&革靴マニアの私が、イギリスの主要な革靴ブランド&英国靴の特徴をお話します!
イギリスの革靴ブランドの特徴|高級紳士靴の中心にして王道
革靴のデザインに関しては19世紀末の1880~1889年頃、ジョンロブなどヨーロッパのシューメーカーによるコンペティションによって礎が築かれました。
当時は、イギリスやフランス、プロイセン、そしてオーストリア・ハンガリー帝国といった国が“列強”でした。
これらの国の有名革靴メーカーが、靴のデザインを決めたことで今に至ります。
中でもイギリスは、当時から中心的なポジションでした。
今回ご紹介するイギリスの革靴ブランドに関しても、この時期に誕生したメーカーが多く存在します。
既成靴はグッドイヤー・ウェルテッド製法が中心
イギリスの靴ブランドは、工業化による機械式製法、つまりグッドイヤー・ウェルテッド製法が中心となっています。
グッドイヤー・ウェルテッド製法とは、重厚な見た目や高級感、そして高い耐用年数を誇る靴の底付け製法のこと。
もともとは、手縫いによる「ハンドソーン・ウェルテッド製法」が英国の伝統的な製法でした。他国に先駆けて産業革命による機械工業化を図り、生産力を向上させていった背景があります。
機械による生産効率化を図ってブランドビジネスを行う既成靴では、グッドイヤー・ウェルテッド製法が中心的な製法になりました。
現在も、ビスポークシューズはハンドソーン・ウェルテッド製法の靴が多くなっています。
Image Photo by UNION ROYAL
グッドイヤー・ウェルテッド製法の特徴としては、アッパー(甲革)とインソールを直接縫い付けず、ウェルトやリブと呼ばれるパーツなどを挟んで縫い合わせていることが挙げられます。
この構造は、靴底が傷んですり減った場合、(上記写真の出し縫い糸&すくい糸を解くことで)アウトソールの張り替えが可能というメリットがあります。
製法名は、発明者の米国人、チャールズ・グッドイヤー2世にちなんで命名されました。特に、英国と米国は機械式グッドイヤー・ウェルテッド製法を積極的に導入したことで、現在の革靴市場が誕生しました。
チャールズ・グッドイヤー世の親である「チャールズ・グッドイヤー」は、発明家として高名でした。
グッドイヤー「1世」は加硫ゴムを発明したことで、世界的タイヤメーカー「GOODYEAR」の社名の由来となった人物です。
グッドイヤー製法とハンドソーン製法の違いは?
Image Photo by REGAL
ちなみに、グッドイヤー・ウェルテッド製法とハンドソーン・ウェルテッド製法の違いに関しては、
- ハンドソーン・ウェルテッド製法にはリブがなく、ソールの返りが良好
- ハンドソーン・ウェルテッド製法はリブを設けないため中物(なかもの)が薄め(ない場合も)
- 木型の再現度(副次的な効果)
などが挙げられます。
グッドイヤー製法は機械による生産性重視の製法であるため、どうしてもフィット感の限界や履きならし時点での「硬さ」は否めません。
一方、革靴マニアにとっては履きならして「自分のものにする」チャレンジ精神が掻き立てられる世界でもあるため、この辺りの感覚は好みが分かれると思います。
グッドイヤー・ウェルテッド製法の靴は、写真の白いテープである「リブ」を接着するため、ソールの返りがやや悪くなります。
正直、機能面ではグッドイヤー製法がハンドソーン製法に勝っている点はありません。
造形&履き心地の両方において、ハンドソーン・ウェルテッド製法の方が「上」であることは間違いありません。
しかし、グッドイヤー・ウェルテッド製法の靴には、量産感と高級感を両立した独自の魅力があることも確かです。
量産品でもあり、高級品でもある。
履きならしながら付き合っていく、そんな魅力ある分野とも言えます。
「靴の聖地」ノーザンプトンにて製造するブランドが中心
また、英国を代表する靴メーカーの多くは、19世紀にノーザンプトンという都市に居を構え、ファクトリーとして生産を続けていることも特徴です。
ノーザンプトンは、ロンドンより100kmほど離れた位置にある都市です。
中世より、ロンドンやバーミンガム、オックスフォードやケンブリッジといった主要都市の中間地点として、物流の中心地となっていた地域です。
さらに、皮を鞣(なめ)すタンニンが採れる樫の木(オーク)が多く自生していることから、皮革産業が盛んでした。
その上、(物流拠点として食用肉も多く流通していたことから)安定した革の供給まで受けられようになり、やがて「靴作りの街」としてのスタンスを確立していったそうです。
また、歴史的な出来事としては、1642年のピューリタン革命(清教徒革命)が挙げられます。
当時、革命の中心人物であったオリバー・クロムウェルが、革命軍の機動力アップのために、兵士それぞれに合ったブーツをノーザンプトンの靴職人に注文したとされています。
この出来事が、ノーザンプトン=靴作りの街として内外に知らしめる結果となったようです。
ノーザンプトンは、地理環境や歴史的なトピック、そして産業革命によって「靴の聖地」となりました。
1980年代以降、英国の製造業衰退のあおりも受けながらも、今でも世界中の靴好きが集まる場所です。
有名ブランドの既成靴だからこそ、有名モデルを共通言語として語れる
さらに、有名モデルの“共通言語性”こそ、イギリスの革靴ブランドにおける最大の特徴と言えます。
要は、他国の革靴ブランドとは「ブランドステータスや有名モデルの知名度が違う」ということです。
「有名モデルを共通言語として語れる点」は、英国の革靴ブランドが圧倒的に秀でていると言って良いでしょう。
例えば、エドワードグリーンの「チェルシー」「ドーヴァー」は、靴好きの中で知らない人はいないと言って良いと思います。
もちろん、英国の有名靴ブランドの中でも“共通言語力=ブランド力”は異なります。
長くOEMや別注を手掛けているメーカーと、ブランドとして高い知名度を誇るメーカーでは認知度が異なる点は、他国や他ジャンルのブランドと同様です。
とはいえ、今回ご紹介するブランドも(多かれ少なかれ)モデル名で語れるものが中心。
英国の高級既成靴は、ブランドステータスと、一定の生産性を両立していると言って良いでしょう。
イギリスの革靴ブランド14選!英国靴おすすめ&特徴を解説【ノーザンプトン】
それでは、具体的に有名&オススメの英国靴ブランドを14選ご紹介します。
ある程度、サイズ感の目星がついていた方が試しやすいと思います。
私の場合は人差し指の長いギリシャ型で、踵~人差し指の先端までが27.5cm、親指までが27cm、足幅の一番長い部分が10cm。
大体の英国靴ブランドではUK8.5F程度がジャストサイズです。
スタンスミスで27.5cm、クラークスのデザートブーツやワラビーでUK8.5(US9)、ドクターマーチンでUK9(ちょっと緩い)。
特記事項があるブランドや木型に限り追記させていただきましたので、購入を検討される場合の参考にしていただけたら幸いです。
エドワードグリーン(EDWARD GREEN)
Image Photo by EDWARD GREEN
- 参考価格
- 269,500円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・英国&革靴を代表するトップブランド
・モデル名&木型で語られるブランド力がある
・土踏まずの“突き上げ感”が強い
エドワードグリーン(EDWARD GREEN)は1890年創業。
英国靴の中心ブランドにして、世界最高峰の革靴ブランドのひとつです。
多くの有名モデルを擁するブランドで、代表的なものはストレートチップの「チェルシー」や、Uチップの「ドーヴァー」などが挙げられます。
革のクオリティも高い個体が多く、履き心地に関しては独特の土踏まず(ウエスト)部分の突き上げが特徴。
また、通常ラインの他、ヒールカップやウエスト部分を攻めた「トップドロワーライン」も存在します。
エドワードグリーンのエルメス買収前の「旧工場製」は、今以上の丁寧な作りから二次流通でも高値で取引される革靴です。
その他、元々はOEM中心のメーカーだったこともあり、1980年代以降は、ラルフローレンやブルックスブラザーズといった、有名ブランドの靴を製造した実績もあります。
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ジョンロブ(パリ)(JOHN LOBB)
Image Photo by JOHN LOBB
- 参考価格
- 312,400円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・革靴界のブランド力No.1
・モデル名や木型で語られる有名な靴が非常に多く、あこがれの的となっている
・「英国靴らしさ」より優雅さを求める人に
ジョンロブ(JOHN LOBB)は、数ある革靴の中でも最高峰のブランド力を持つ「キング・オブ・シューズ」。
1866年、ロンドンのビスポークメーカーとして創業した英王室御用達ブランドです。
ジョンロブは1976年に経営難に陥ると、展開していたロンドン本店以外の全ての店舗がエルメスの傘下になりました。
結果、資本が二手に分かれ、ロンドンのビスポークのみを扱う通称「ジョンロブ・ロンドン」と、エルメス傘下の「ジョンロブ・パリ」に分かれました。
私たちが普段、目にするのはジョンロブ・パリです。
エルメス資本によるジョンロブ(パリ)は、1982年にお披露目されました。
ビスポークシューズの技術を生かした既成靴を展開し、既成靴ブランドとしてもトップブランドとしての地位を築きました。
「パリ」と呼ばれるだけあって、エレガントで高級感溢れる靴を手掛けていることが特徴です。
同じく最高峰と称され、英国靴らしい特徴を持つエドワードグリーンなどと比較しても、洗練された印象を受けます。
代表的なモデルは、パンチドキャップトウの「フィリップⅡ」や、ストレートチップの「シティⅡ」など。
ラストはシャープなラウンドトウの7000番(ハーフサイズアップでジャスト)、セミスクエアトウの8000番などが有名です。
その他、スタンダードラインの他に「コテージライン」、上級ラインの「プレステージライン」などに分かれます。
毎年秋に発表される「イヤーモデル」の意匠性も見逃せません。
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フォスター&サン(FOSTER&SON)
楽天市場より引用
- 参考価格
- 154,000円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・歴史ある名店の、ハイクオリティな既成靴
・ラウンドトウ×癖のない標準的なサイズ感
・現在は閉業中だが、探し回ってでも良い物を手に入れたい
フォスター&サン(FOSTER&SON)は、ロンドンで1840年に創業した英国老舗靴工房&ブランド。
(正直、入れるか迷いましたが)私が最も良いと思う英国の既成靴ブランドです。
というのも、フォスター&サンの既製靴は現在閉業中(注文靴は手掛けています)。一日も早い復活が望まれます。
フォスター&サンの靴は、ラウンドトウの英国らしいベーシックなモデルが中心です。
素朴かつ上品な見た目だけではなく、グッドイヤー製法の既成靴にして、土踏まずに沿った上々の履き心地も提供してくれます。
ブランド力はもちろんのこと、クオリティや適正価格といった点でも非常に優れています。私も手に取った際、定価15万円前後でこのクオリティを実現できることに驚きました。
楽天市場などで販売されている在庫品限り。
個人的には、多少のプレミア値が付いてでもオススメです。
ガジアーノ&ガーリング(GAZIANO&GIRLING)
Image Photo by TRADING POST
- 参考価格
- 302,500円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・英国靴界の革命的新興ブランド
・今回のNo.1クオリティを誇るブランド
・シェイプが効いた、スタイリッシュなスクエアトウが中心
ガジアーノ&ガーリング(GAZIANO&GIRLING)は2006年に創業した新興ブランド。
その実力から「老舗であることがブランドステータスの条件」であった、英国靴業界の革命児的なブランドです。
ガジアーノ&ガーリングは、僅か10年ほどでトップブランドと認知されるようになりました。
設立者は、エドワードグリーン再興の立役者であったトニー・ガジアーノと、高名なビスポークシューメーカーであったディーン・ガーリング。
「今」の実力を重視しており、シャープでスタイリッシュな“カッコいい”靴を求めている方に最適です。
代表的なローファー「アンティーブス」や、上級ライン「DECO」のラインナップは必見です。
ガジアーノ&ガーリングは、既製靴でありながらビスポークのような見た目をしていることも特徴。
ウエストだけでなく足幅も細めでスクエアトウが中心、全体的にメリハリが効いた靴です。
Image Photo by TRADING POST
その他、アッパーの革質が非常に高いこともガジアーノ&ガーリングの強みです。
サイズ感に関しては細身な木型が多いため、通常の英国靴よりサイズアップされる方もいます。
代表的なTG73やDG70などの木型は、私の場合はハーフサイズ上げる程ではありません。
一方、足幅が普通~やや広めくらいの方は、一般的な英国靴よりもハーフサイズ上げても良いくらいのサイズ感です。
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アンソニークレバリー(ANTHONY CLEVERLEY)
Image Photo by MITSUKOSHI ISETAN
- 参考価格
- 308,000円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・歴史ある名店から発売されている、プレミアムラインの既成靴
・シェイプが効いたスタイリッシュな「チゼルトウ」が木型の特徴
・「レイジーマン」で有名なブランド
アンソニークレバリー(ANTHONY CLEVERLEY)は、「ジョージクレバリー」創業者の甥であるアンソニー・クレバリーが1990年代に立ち上げたプレミアムライン。
最大の特徴は「チゼルトウ」という、ノミ(=チゼル)の刃先のような、つま先両サイドのエッジを効かせたシルエット。
伝統的な英国靴とは一線を画する、色気と意匠性あるスタイリッシュなモデルが中心です。
ちなみに、アンソニークレバリーの既成靴は、エドワードグリーンによるOEM生産です。
ウエストのフィルドバック仕様やピッチドトールなど、エドワードグリーンの通常ラインにはないエレガントさも特徴です。
Image Photo by MITSUKOSHI ISETAN
写真は「チャーチル」というサイドエラスティックのモデルで、レイジーマン(レイジー=怠惰)とも呼ばれるものです。
一見、紐靴に見せかけてフロントレースはフェイクになっており、紐を結ばずに履ける靴です。
チゼルトウのシャープさが気に入った人や、レイジーマンにチャレンジしたい方にはピッタリのブランドです。
個人的には、(レイジーマンの靴に限らず)アンソニー・クレバリーは超歩きやすい靴だと思います。
足形に合っているのか、靴としての重量のバランスが良いのか、あるいはその両方かといった感じです。
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ジョセフチーニー&サンズ(JOSEPH CHEANEY & SONS)
楽天市場より引用
- 参考価格
- 74,800円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・スタンダード×そこそこ高級な木型の靴を選びたい
・癖のない木型&展開する種類も豊富
・コストパフォーマンスや実用性重視
ジョセフチーニー&サンズ(JOSEPH CHEANEY & SONS)は1886年創業。
「コストパフォーマンスの高い英国靴」として、見かけることが多いブランドです。
長らく、ブランドのOEMや別注品を中心に手掛けてきました。そのため、定番モデルによる魅力というよりも、英国靴らしさを維持しつつスタンダードな靴作りが特徴。
一方、2009年以降は“モデル名で語れるブランド”化にも注力しています。
代表的なモデルはストレートチップの「アルフレッド」やアデレードの「フェンチャーチ」、ミリタリーシューズの「ケンゴン」など。
全体的に癖のない木型で、幅広い人に合わせやすいサイズ感です。
その他、チーニーは英国軍への供給や、「ロイヤルツイード(Royal Tweed)」ネームなどで輸出業にも注力していたブランド。
1966年には英国で最も栄誉ある賞のひとつ“Queen’s Award”の輸出部門で受賞しました。
高級靴のデビューや、ある程度気兼ねなく履けて、さらに手入れのし甲斐があるブランドを探している方にも最適です。
現在のチーニーCEOはウィリアム・チャーチ。チャーチの創業一族です。
チャーチ家がプラダ傘下にあるチャーチブランドからチーニーを買い取り、2009年に切り離して独立した格好です。
チャーチ(Church’s)
Image Photo by Church’s
- 参考価格
- 176,000円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・特に知名度が高い英国靴ブランド
・既成靴らしさもある、独特の雰囲気
・コストパフォーマンス?そんなの関係ねえ!
チャーチ(Church’s)は1873年創業。英国靴の中で、最もどの時代も活躍したブランドではないでしょうか。
量産靴に左右の違いを生み出したり、既成靴で初めてハーフサイズ刻みのサイズ展開を行ったブランドでもあります。
チャーチの靴に対する歴史的な貢献度はすさまじく、現在の革靴の基礎を作ったブランドといっても過言ではありません。
代表的なモデルは、ストレートチップの「コンサル」、セミブローグの「ディプロマット」、フルブローグの「チェットウィンド」、プレーントウの「シャノン」など、枚挙に暇がありません。
チェットウィンドは、トニー・ブレア英元首相の愛用シューズとしても有名でした。
その他、ポリッシュドバインダーという、革の表面に樹脂加工を施した革もチャーチのお家芸。
ガラス革に抵抗ある革靴好きの方も多いと思いますが、雨の多い英国で水に強い&高級感もある便利な仕様として誕生しました。
私が間違いなく一番集めた英国靴ブランドで、今でも大好きです。トリッカーズ同様、モデルの魅力で勝負するブランドです。
Image Photo by Church’s
私のように「有名モデル×あえての既成靴感」を求める変わった方にはオススメ。
私がこれまで確認しただけでも、CC41(第二次世界大戦中の物質統制商品)から筆記体、都市名表記ナシ、2都市(LONDON/NEW YORK)、3都市(+PARIS)、4都市(+MILANO)、5都市(+TOKYO、現行品)と、時代ごとにインソックに記された都市などの表記が異なります。
3都市も前期と後期で作りのレベルがだいぶ異なるなど、ヴィンテージ品の年代も大まかに特定できることも特徴。
トリッカーズ(TRICKER’S)
Image Photo by TRICKER’S
- 参考価格
- 132,000円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・ノーザンプトン最古の英王室御用達ブランド
・重厚感あふれるブーツやシューズが中心
・コラボや別注モデルも豊富で、日本でも入手しやすい革靴
トリッカーズ(TRICKER’S)は1829年創業。
現存するノーザンプトン最古のシューメーカーで、チャールズ英国王御用達のブランドです。
トリッカーズはドレスシューズの展開もありますが、なんといっても写真の「ストウ」や、短靴の「バートン」が有名。頑強なグッドイヤー製法によって、タフな靴を作り上げています。
作りの精密さや凝り方よりは、有名モデルの独特な世界観による魅力を味わうブランドです。
別注品が多すぎて把握しきれないブランドとしても有名で、日本のブランドだけでも数十(数百?)とあると思います。
サンダース(SANDERS)
Image Photo by SANDERS
- 参考価格
- 59,400円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・官庁向けの実績ある英王室御用達ブランド
・ミリタリー要素の強い革靴が好き
・モデルの有名さよりも、コストパフォーマンスや実用性を重視している
サンダース(SANDERS)は、ノーザンプトンのファクトリーの中でも深い歴史を持つ英王室御用達ブランド。
1873年、ウィリアム&トーマス・サンダース兄弟によって誕生したブランドです。
Image Photo by SANDERS
サンダースの特徴としては、ミリタリー色の強いコレクションが中心であること。
これは、サンダースが英国国防省向けに革靴を供給してきた実績を基に、ブランド化したことが理由です。
現在も工場の製造ラインの内、約半分が官庁向けの製品に割り当てられているそう。
外羽根の重厚感あふれる短靴やブーツが、サンダースを代表する商品。
ヤフオクやメルカリなどでも「UKオフィサーシューズ」として、サンダース製の革靴を良く見かけます。
また、サンダースはジャケパンやオフの日兼用のシューズ使いに最適です。
堅牢な英国靴を日常的に履きならし甲斐のある、スーツを着ない人にもオススメできるブランドです。
近年、セレクトショップ等でも高い人気を誇っており、カジュアルシューズやレディースの靴も充実しています。日本でもオンライン/オフライン問わず入手しやすいブランドです。
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グレンソン(GRENSON)
Image Photo by GRENSON
- 参考価格
- 98,890円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・日本での知名度よりは、“良い靴”を作る実力派ファクトリーが好き
・予算に応じてラインを選べ、レディースやカジュアルシューズも充実
・武骨なフォルム×高耐久な靴が良い
グレンソン(GRENSON)は1866年、ウィリアム・グリーンがラシュデンの小さな工房で靴製造を始めたブランド。
内羽根フルブローグが代表的なモデルで、G-ONE/G-TWOといったネーミングでラインが分かれています。
カントリーな靴から、ダークスーツにも合わせられる革靴まで手掛けていることが特徴。
さらに、メンズのカジュアルシューズからレディースの革靴まで展開する総合シューズブランドです。
特定の木型やモデル名が非常に有名、というわけではありませんが、実力派のファクトリーであることは間違いありません。
(現在は生産中止となっている)最高峰のG-ZEROラインはクロケット&ジョーンズのハンドグレード以上、G-ONEもチーニー以上のレベルです。
また、一昔前よりは聞かなくなった気もしますが、実は日本でもオンラインで買いやすいブランド。
楽天市場などで積極的に販売されています。
ラストは#73や#103が比較的メジャーですが、いずれもミドルノーズ~ややロングノーズ程度のラウンドトウ。クセの少ない型が中心です。
ウィズも(E/EX/F/FX/Gと少し変わった表記ですが)細め~広めまで用意されています。
その他、ラバーソールはビブラムソールが中心です。ビブラムソールは(ダイナイトソールと比べて)耐久性に優れているため、体重が重めの方にもピッタリ。
クロケット&ジョーンズ(CROCKETT&JONES)
Image Photo by FRAME
- 参考価格
- 137,500円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・歴史ある英国の実力派ブランド
・中庸~ややエレガント程度の程よいバランス
・実力とモデル名の知名度、どちらも重視したい人向けのブランド
クロケット&ジョーンズ(CROCKETT&JONES)は1879年創業、ジェームズ・クロケットとチャールズ・ジョーンズによって設立されたファクトリー。
実力とモデル名の知名度、どちらも重視したい人向けの優等生的シューズブランドです。
英国靴の名だたるメーカーのOEM生産を担当しつつ、「オードリー」などの自社モデルでも頭角を現したブランドです。
Image Photo by FRAME
1997年にロンドンのジャーミンストリート、1998年にパリに直営店をオープンし、2002年に発表した#337(パリラスト)がヒット。
また、近年は#367ラストという、#337のウエストを絞った&踵を小さくした木型も発売しています。
個人的には、かなりの傑作だと思っています。
また、クロケット&ジョーンズは、主にスタンダードラインとハンドグレードラインの二種類に分かれます。
ハンドグレードラインは「オークバークソール」「ヒドゥンチャネル」「半カラス塗り」と、高級感溢れる仕様です。
また、ダニエル・クレイグ演じる「007」シリーズで、現在のジェームズ・ボンドが履いている靴もクロケット&ジョーンズです(以前はジョンロブやチャーチも履いていました)。
ブランド力の面においても同価格帯の競合より一歩リードしている印象です。
私が最初に買った英国の高級革靴ブランドは、クロケット&ジョーンズのハンドグレード(#337ラスト)でした。革質やソールの材質が良かったですね。
踵のシェイプやアッパーのステッチがもう少し丁寧だと文句なしですが、かなり上質な部類だと思います。
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ジョージクレバリー(GEORGE CLEVERLEY)
Image Photo by BEAMS
- 参考価格
- 143,000円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・歴史ある名店のスタンダードな既成靴
・エレガントなディテールの靴が好き
・クロケット&ジョーンズの作り×少し変わったモデルが良い
ジョージクレバリー(GEORGE CLEVERLEY)は、1958年創業の英国を代表するシューメーカーです。
1994年から既成靴をローンチしており、現在ではジョージクレバリー社のスタンダードラインとなっています(プレミアムラインは先述の「アンソニークレバリー」)。
元々はビスポークで著名になったブランドですが、既成靴はクロケット&ジョーンズがOEM生産しています。
ハンドグレードライン相当の靴にフィルドバック仕様などを加え、よりエレガントなディテールとなって展開されています。
また、ビスポークブランドとしてのジョージクレバリーは、独特なエレガンスと「手袋みたい」と表現されるほどのフィット感が評判となったメーカーです。
帝政ロシア時代にトナカイの皮を鞣して製造されていた幻の「ロシアンカーフ」を使用したことでも話題となりました。
バーカー(BARKER)
楽天市場より引用
- 参考価格
- 63,800円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・高級紳士靴のエントリー的ブランド
・軽量で対滑性に優れたダイナイトソール
・無難な通常ラインとは対照的な、特別ラインにも興味がある
バーカー(BARKER)は1880年創業。(高級英国靴の中では)比較的廉価な価格帯で展開されており、革靴初心者にもピッタリなメーカーです。
バーカーはダイナイトソールの採用率が非常に高く、レザーソールと比べて軽量で滑りにくいことが特徴。
また、革質も3、4万円台の国産靴よりも優れている個体が多い印象です。
10万円クラスの革靴とは比べられませんが、十分良い靴に見えるレベルです。
楽天市場などでお買い得価格になっていることが多く、サイズも標準的ですのでトライしやすさも◎。
その他、バーカーブラック(BARKER BLACK)という、2005年にデリック&カーク・ミラー兄弟によってニューヨークで創業したブランドの製造も担当しています。
バーカーブラックでは、ドクロをモチーフにした面白いコレクションが見られます。
特徴的なレースの通し方や、ローファーが代表的なモデルです。
こちらは価格も10万円前後と高額になりますが、高級感もアップしていることも◎。
単なるスーツ用の革靴というより、ポイントとして取り入れるためのラインです。
ローク(LOAKE)
Image Photo by Madras
- 参考価格
- 56,100円
➡特徴&こんな人にピッタリ
・リーズナブルでコストパフォーマンスの高い英王室御用達ブランド
・価格に応じてラインを選びたい
・“そこそこ良い靴”は履きたい
ローク(LOAKE)は1880年創業、ノーサンプトンでトーマス、ジョン、ウィリアム・ロークの3兄弟により設立されました。
2007年には英王室御用達に認定された、そこそこの靴を比較的リーズナブルな価格で展開するブランドです。
ロークは、さまざまなラインを展開していることが特徴です。
例えば、
- LOAKE1880CLASSIC
- LOAKE1880COUNTRY
- PROFESSIONAL
など。
CLASSICで日本国内販売価格6万円程度、リーズナブルなラインで4万円台と破格です。
「モデルに凄い魅力がある!」というわけではないものの、初心者の取り入れやすさが魅力。
その他、バッグやベルト、革小物も展開している幅広いブランドです。
英国靴に関する疑問|どの英国靴ブランドを選べば良いの?
最後に、英国靴に関する選び方について。
選ぶ際、予算はもちろんですが、まずは「見た目や雰囲気が好きかどうか」だと思います。
その中で、
- 特定モデルやブランド色の強いタイプ
- 既成靴らしいコストパフォーマンス重視タイプ
- ハンドメイドスーツと合わせる作りのブランドを選ぶ
といった、選び方に分かれるのではないでしょうか。
特定モデルやブランド色の強いタイプ
特定モデルやブランド色の強いタイプは、ジョンロブやエドワードグリーン、トリッカーズ、チャーチなどが代表的。
英国靴はブランドの長い歴史や格によって培われた、名作揃いであることは間違いありません。
例えば、スキンステッチの施されたUチップといえばエドワードグリーンの「ドーヴァー」ですし、カントリーブーツといえばトリッカーズの「ストウ」です。
それぞれ、代名詞的な存在であることは間違いありません。
(エドワードグリーンのトップドロワーはさておき)、これらは価格に対して物凄く高品質な作りではないものの、愛すべきアイコンモデルによる魅力を発信しているブランドです。
既成靴らしい、コストパフォーマンス重視タイプ
一方、チーニーやサンダース、バーカーなどは「それなりの高級品で既成靴っぽい」ことが特徴。
所有欲を満たしつつ、実用品としても使っていくのに最適です。
私が英国の既成靴と接する際のスタンスは、こちらの方が近いと思います。
私の場合、チーニーが好きでスーツを着る日によく愛用しています。以前はチャーチでした。
ちなみに、クロケット&ジョーンズは微妙なところで、やや「ブランドタイプ」寄りの「実力派タイプ」といった塩梅だと思います。
ハンドメイドスーツと合わせる、作りのブランドを選ぶ
ガジアーノ&ガーリングや、フォスター&サン、アンソニークレバリーなどは、ビスポークらしさを感じさせる靴です。
リングヂャケットマイスターや、クラシコイタリアなどのハンドメイドスーツと合わせるのに適しています。
ちなみに、今回ご紹介している中で最も優れた作りの靴は、アンソニー・クレバリー(靴としての設計)か、ガジアーノ&ガーリング(革質やディテールの手間)だと思います。
グッドイヤー・ウェルテッド製法ですが、革質が非常に高い&造形も凝っています。
そして、フォスター&サンも(残念ながら生産停止していますが)非常に優秀です。
個人的には、モデル名でカッコよくなるわけではないと思っているので、どちらかといえば東欧靴や旧ボノーラ、シルバノラッタンジのようなハンドソーンの既成靴やビスポークの方が好きです。
しかし、ブランド力やコスパによる魅力も感じないわけではありません。
ふと、たまに英国靴も履いてみたくなるのは、やはり既成靴的な魅力や、英国靴的魅力が存在するからだと思います。
ぜひ、あなた自身の価値観をおさらいして選んでみてくださいね。
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