日本の革靴ブランドを代表する、スコッチグレイン。
東京・墨田に居を構え、下町感溢れる魅力を発信しつつ、高品質な革靴を提供してくれるブランドです。
一方、スコッチグレインを購入してみて、
と、履き心地やサイズ感、その他諸々において感想を抱く方もいらっしゃると思います。
中には、スコッチグレイン特有の欠点が何か、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、私も愛用するスコッチグレインの「欠点」について。
世間一般でよく言われる事項と、ファッションのプロである私が思う事項を挙げようと思います。
まず、世間一般で言われている「スコッチグレインの欠点」について
まず、世間一般でよく挙げられているスコッチグレインの欠点について。
ファッションのプロが本当にそうなのか、という点についても触れようと思います。
完全防水ではない
Image Photo by SCOTCH GRAIN
まずは、「完全防水ではない」という点。
これは、その通りです。
しかし、靴の品質が悪いといった理由ではなく、構造上、仕方がない部分だと思います。
Image Photo by SCOTCH GRAIN
スコッチグレインの場合、「シャインオアレイン」というシリーズが、撥水レザーを採用した「雨に強いモデル」として位置づけられています。
アッパーは雨を弾いてくれるのですが、アウトソールの出し縫い(ソール裏に走るミシン目)などから水を吸い、中に入っていきます。
とはいえ、私の価値観としては、確かにシャインオアレインは「いまひとつ、ポジションが中途半端だと思う」です。
これは、
- 防水性に振り切れていない
- 本革モデルにしては、革質が中途半端
- アッパーが本革でも、通気性にはほとんど寄与しない
といったことが理由です。
Image Photo by 三陽山長
例えば、防水性の高い靴を選ぶならば、三陽山長「防水 友二郎」が、2万円そこそこで購入可能です。
セメンテッド製法&アッパーが塩化ビニルの靴ですが、その分防水性が高く、見た目も悪くありません。
稀に「革は天然素材で呼吸が・・・」と言う人がいますが、アッパーが本革だとしても繊維が密になっており、さらに顔料や接着剤等で通気性はありません。
そもそも、人の足が汗をかく大半は足の裏からです。そのため、普段愛用している防水靴にレザーインソールを敷くだけでも、効果は変わりますよ。
革質(履きはじめのシワ)
次に、スコッチグレインの革質について。
これは結論、購入するグレードにも依ります。
同価格帯の競合ブランドと比較して悪いとは思いませんが、とはいえ特別良くもないことは確かです。
特に、「国産カーフ」を採用しているアシュランスやベルオム、先述のシャインオアレインなどの革質は、「非常に高い!めっちゃいい!」というほどではありません。
価格帯的に致し方ないという部分はありますが、日本の革靴ブランドの場合、(キメの細かい仔牛の肉を食べる文化が国内にほとんどないため)どうしても原皮が貴重なものです。
結果として、日本の革靴ブランドは大半を輸入に頼り、国内で革を手に入れるのもコストが嵩みます。
私たちは、平安時代から明治の始まりに至るまで、「肉を食べないことが高貴な身分のふるまい」「肉を食べるのはいやしい」と思われるようになった国に住んでいます。
家畜を食し、毛や肉を余すことなく提供する対象とするか、それとも労働力を提供してくれる大切な存在であり、食べる対象としては見なかったか、というスタンスの違いでもあります。
履いていく内にサイズ感が変わる
第三に「履いている内に、サイズ感が変ってしまう」というもの。これは、グッドイヤー・ウェルテッド製法の革靴としては、致し方ない部分です。
というのも、グッドイヤー製法の革靴は、ほとんどが中物として、練りコルクやウレタンスポンジなどを敷いています。
これが、履いていく内に足の形になることで履きやすい靴となり、同時に購入時よりも“大きく”なります。
上記動画の5:42くらいのところで、靴の底に白い中物が確認できると思います。
スコッチグレインの場合はウレタンで、他のブランドは練りコルクなどを使用します。
ひょっとすると、「高い金を出して、最初痛い思いをしなきゃいけないとか意味不明!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ごもっともな意見かもしれませんが、革靴とはそういうものです。
ビスポークや超高級な既成靴の中には、完全に「中物」を除いたものもありますが、そういったブランドは数十万~ときには百万円オーバーになったりします。
私のスコッチグレインも、購入当初はむちゃくちゃに靴擦れを作ってくれました。本当に痛かったです。
取扱店舗が少ない
最後に「スコッチグレインは取扱店舗が少ない!」という意見。これに対しては、「そこまで言われるほど少ないかな?」と思います。
確かに、スコッチグレインには、リーガルのような店舗数はありません。
しかし、地方都市の百貨店でも販売されていますし、全国各地のアウトレットでも販売されています。
超大手と比べると少ないかもしれませんが、「高級紳士靴」とされるブランドの中では、かなり多い方だと思います。
ちなみに、スコッチグレインのHPにある「取り扱い店舗」は直営店のみ。実際は、地方の百貨店においても販売されています。
プロが思う、スコッチグレインの欠点は?
ここまで、スコッチグレインの世間一般で言われる欠点をご紹介してきました。
しかし、どれもスコッチグレイン特有の致命的な欠点ではなく、革靴というものや、価格帯的に仕方がない範囲だと思います。
というわけで、ここからは私が思うスコッチグレインの欠点についてお話します。
最大の欠点は、純正ソールに「ハーフラバー」を貼れないこと
私が思う、スコッチグレインの大きな欠点。
それは、純正ソールのほとんどにハーフラバーを貼れないことです。
どういうことかと言うと、購入時から、
Image Photo by 匠ジャパン
こうなっていたり、
Image Photo by 匠ジャパン
あるいは、こうなっていたり、
Image Photo by 匠ジャパン
はたまた、こうなっていたりします。
つまり、最初からつま先がゴムだったり、ソールの接地面が一部ゴムだったり、あるいはハーフラバーを貼った上で、出し縫いのステッチが掛けられたりしています。
厳密にいえば貼れないことはないでしょうが、剝がれやすかったり、見た目の点でも良いとは言えないでしょう。
実際のところ、オリジナルの公式修理工房があることも、純正のソールがあることもデメリットではありません。
しかし、スコッチグレインの場合、最上級の「インペリアルフランス」「インペリアルプレスティージ」などを除き、購入時にハーフラバーを貼れない仕様になっています。
そのため、必然的にオールソールの回数が増えてしまいます。
グッドイヤー製法の革靴においても、無限にソールを交換できるわけではありません。状態や修理の腕にも依りますが、回数は限られています。
そのため、購入時にハーフラバーを貼れない仕様は、靴の寿命にも直結します。
ちなみに、革靴のハーフラバーって何?
Image Photo by UNION WORKS
ちなみに、ハーフラバーとは、革靴のソール(靴底)の前半部分に、ゴム製のラバーを貼り付ける加工のことを指します。
具体的には、つま先から足の中央部分までのソールにラバーを張り付けることで、
- 滑り止め効果(レザーソールはどうしても滑り易い)
- ソールの耐久性が向上する
- 水が侵入するのを防ぐ
といったメリットがあります。
あえてソール本体に接着することで、ソール本体が摩耗したり、糸を伝って水が浸入するのを防いでくれます。
また、ハーフラバーが摩耗したら剥がして、また接着することが可能です。
一方のデメリットは、格好の問題と、ソールの返りが少しだけ感覚が変わることでしょうか。
ちなみに、ハーフラバーを貼ると足が蒸れるようになるという意見も耳にします。
これも、透けるような薄さであればともかく、レザーソールの厚さで通気性も何もありません。加えて、先述の動画の通り、リブを接着して、ウレタンの中物を入れて、さらにソールまで装着して・・・。皆さんが思うような通気性は、ありません。
Image Photo by 匠ジャパン
一方、先ほどのスコッチグレインが提供する純正ソールの場合、ハーフラバーを張り付けたソールはあるものの、ソール本体と一緒に縫い付けられてしまっています。
こうなると、ハーフラバーが摩耗すると、結局ソール裏のステッチを解かなければならず、オールソール交換をしなくてはなりません。
滑りにくくなったり、ソールの耐久性自体が上がることは間違いないです。
しかし、「長年愛用して履く」となると、ハーフラバーだけを剥がして交換できるようにしてほしいですね。
純正ソールにするか、通常のレザーソールにするか問題
スコッチグレインの場合、一部の高級ラインを除いて、いきなりハーフラバーを装着することが難しいです。
見た目やソールの問題を除くと、
よりも、
といった方が、遥かに長持ちします。
後者の場合、履き方や足との相性、どのくらい歩くかにも依りますが、それこそ週1、2回履いて10年もたせるといったことも可能です。
だからこそ、革靴の中でも「よく履いて外回りする」という靴の場合、ハーフラバーは貼った方が良いと思います。
私の場合、よく履く革靴はハーフラバーを貼って、ここぞという革靴はレザーソールのままにしています。
スコッチグレインの場合、特に外回り営業の人が、「身だしなみとして、ちゃんとした革靴を愛用する」ことも多いと思います。なるべく長持ちさせたい場合、ハーフラバーは貼った方が良いです。
まとめ|スコッチグレインの欠点は、オールソール回数が増えてしまうこと
まとめると、スコッチグレインの欠点とは、
ことにあります。
つまり、靴の寿命としても、お財布的にも痛い仕組みになっています。
オールソールの回数が重なれば、ソールだけでなく中に入っているリブやウェルトの交換にも繋がります。
そのため、革靴の寿命を短くしてしまうことにも繋がるのです。
スコッチグレインは、ソールにも特徴があるため、純正の修理が可能な点は嬉しいところ。
併せて、長年履ける仕組みにしてくれたら、グッドイヤー・ウェルテッド製法の靴を作る意義にもなります。
「商売だから」ということでしょうが、純正ソールの見た目にこだわりがなければ、他の靴修理屋へ修理を依頼した方が、長持ちする軌道に乗せられます。
現在は、ミスターミニットなどが、Amazonや楽天市場などでソール交換を受け付けている時代です(往復送料無料&修理も上手いです)。
ハーフラバーも貼ってくれるので、それでも純正が良いか、長年愛用できる仕組みにシフトするか、迷うところですね。
おしまい!
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