こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。
本日はコートでよく聞く「ダブルフェイス」について。
冬のアウター選びをしていると、よく目にする「ダブルフェイスコート」という言葉。
と、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで本日は、ファッションのプロである私しょるが、ダブルフェイスの定義から構造、実際にどんな効果があるのかも解説。
総じて軽量で暖かな贅沢な仕立てで、一枚でしっかり暖かいにも関わらず軽いのが特徴です。
手持ちのダブルフェイスコートもレビューしますので、購入を検討している方や興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
ダブルフェイスのコートとは?特徴と構造を解説
まず、ダブルフェイスとは何か、ダブルフェイスのコートを中心に解説します。
両面を「表地」にした軽量で暖かい生地
Image Photo by HERMES
「ダブルフェイス」は、その名のとおり“二重の表面”という意味。
つまり、両面表生地で構成される、特殊な加工法を用いた生地を指します。
具体的には、生地の裏と裏を毛抜き合わせにすることで、人に見られる面も、着る人の内側に来る面も両面とも表地にするのがダブルフェイスです。
生地には「表面」と「裏面」があります。
表面の方がふわっとしており、裏面の方が平滑で板状のような質感になっているものが多いのですが、ダブルフェイスは両面とも“ふわっと”しています。
ダブルフェイス構造のメリット
Image Photo by SANYO ONLINE
ダブルフェイスコートのメリットとしては、
- 「表面」「毛抜き合わせ」によって“ふわっとした面”が増え、空気層によって暖かい
- それでいて、軽量に仕立てることが可能(生地の「暖かくない割に重い部分」が少ない)
- 表と裏で異なる色や素材にすることも可能
という点。
何より、ウールやカシミヤのコートで軽くて暖かいという、見た目の情緒的価値と機能的価値を両立した構造であることが最大の長所です。
風でめくれても「裏側が見えちゃってる感」も薄いのが、ダブルフェイスコートの特徴でもあります。
二重構造による空気層
ダブルフェイス生地は、二層の間に空気を含む構造を持ちやすいです。
この空気層が、いわゆる「断熱材」の役割を果たし、外気の冷たさを内側に伝えにくく、保温性を高めます。
結果、同じ生地厚の場合、ダブルフェイスのほうが優れた断熱効果を発揮しやすいです。
生地が密になりすぎない
ダブルフェイスは、表と裏の生地繊維に空気が含まれます。
部分的に糸でつなぎ合わせたり、ボンディングによる合わせ技術を使う場合がありますが、必要以上に重くならない上、繊維の膨らみによって保温力を維持しやすい構造になっています。
独特の温かみある雰囲気
ダブルフェイス生地で仕立てたコートは空気層を持つことを活かし、裏地を省略したアンコンが中心です。
また、生地の特性上、イセを多くとらないものがほとんどで、結果としてオーバーサイズやラグランコートが多くなります。
カシミヤなどが特に活きる
カシミヤやキャメルといった、保温性の高い素材を用いたダブルフェイスコートは素材がさらに活きます。
軽やかさとキメ細かな毛羽立ちが相まって、体を柔らかく包み込んでくれる感覚が“やみつき”に。
(尤も、その分、価格はかなり上がることが多く、ビックリするプライスになりがちですが・・・!)
「二重織」と「ボンディング」の違い
そして、生地をダブルフェイスにする方法は主に2種類あります。
それが、「二重織」と「ボンディング」です。
二重織
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「二重織」の場合、二枚の生地を剥離して分かれた生地を裏合わせにした上で、糸でまつります。
空気層を確保しやすく、柔らかさやしなやかさが保たれ、着心地がふんわりと軽いのが特徴です。
ただし、近年は日本でも、「二重織」の特性を活かした製造が可能なファクトリーがほとんどありません。
後述の通り、ダブルフェイスは価格も高くなりますが、特に「二重織」は今後、ますます貴重な製法になると思います。
ボンディング(接着)
Image Photo by トータス株式会社
一方、「ボンディング」は二枚の生地を接着剤などで貼り合わせる技術です。
より軽量で比較的コストは抑えられる一方、風合いはどうしても二重織に劣ります。
また、「接着剤を使う」という点からメンテナンス性に難があります。
ボンディングの場合、製造後、何もしなくても接着剤が染み出す場合があり、見た目が悪くなる可能性があります。
水溶性の接着剤なら水分で剥離しますし、熱で圧着している場合、アイロン掛けや染み抜きの工程で剥がれるリスクがあります。
ハッキリ言って「二重織」の方が圧倒的に良い
Image Photo by TOMORROWLAND
正直なところ、ダブルフェイスのコートに用いる場合は圧倒的に「二重織」が良いです。
ボンディングにもメリットはありますし、例えばゴアテックスブルゾンなどもボンディング構造です。
しかし、
- 水分や熱による剥離や接着剤の染み出し
- 風合いの違い(二重織の方がふっくら感がある)
- クリーニングの難しさ(どんな接着剤が使われているか、プロのクリーニング屋さんでも外から見分けられない)
という点が、どうしてもデメリットになりがちです。
個人的には、ボンディングのダブルフェイスを選ぶなら、別にダブルフェイスのコートでなくても良いと思います。
「二重織」と「ボンディング」の見分け方は・・・
ちなみに、「二重織」か「ボンディング」かを見分ける方法は、
パッと見の特徴
二重織
二重織は、一枚の生地の中に2層の織りが組み込まれているため、縫い目や生地の端を見ると、2つの異なる層が糸で繋がれているのが分かる場合があります。
一般的に柔らかく、しなやかで自然な伸縮性があります。
ボンディング
2枚の生地を接着剤や熱圧着で貼り合わせた構造です。そのため、縫い目や生地の切り端を見た際に、接着剤の跡や硬さを感じることがあります。
生地がしっかりしており、やや硬めの触り心地が特徴です。
生地の厚みと硬さ
二重織
二重織は、自然な厚みで、柔らかくて動きに追従する感じがあります。
ドレープ性が良く、落ち感が美しいことが多いです。
ボンディング
若干硬めで、表裏一体のしっかりとしたフォルムを維持しやすいです。
厚みが均一で、前身頃を触ったときに厚紙をかませたようなしっかりした硬さや追従感を感じることがあります。
縫製の仕上がり
二重織
縫い目が比較的自然で、厚みがあっても柔らかい&膨らみを感じる仕上がりになります。
また、カット部分に接着剤の跡や、使用して行っても染み出しがないことも特徴です。
ボンディング
縫い目の部分に少し硬さが出ることがあり、曲げた際にパキッとした硬さを感じることがあります。
(モノによっては)カット部分を触ると、接着剤によって少しザラつきを感じることがあります。
あとは、
「洗濯表示タグに「ボンディング加工」の記載がある」「素材表示に「ポリウレタン」の記載がある」「経年劣化によって『剥離が避けられない旨』が書かれている」
場合、ボンディングによるダブルフェイスコートです。
手持ちの「リングヂャケットナポリ」のダブルフェイスコートを紹介
Image Photo by RING JACKET
ここでは、筆者が所有しているカシミヤダブルフェイスコートを紹介します。
「リングヂャケットナポリ」のカシミヤ100%ベルテッドコート
写真が、私が所有している「リングヂャケットナポリ(RING JACKET Napoli)」というブランドのダブルフェイスコートです。
日本屈指の高品質なテーラリング技術を持つリングヂャケット(RING JACKET)が展開するラインのひとつで、「ナポリ仕立て」の伝統や技術を意識したラインです。
リングヂャケットの高い品質基準に基づきながら、「デザインの美しさ」「ハンドメイド」「素材選び」といった点を追求しています。
定価は550,000円(税込)です。
超高額に感じるかもしれませんが、このクオリティや手間を考えると、某世界的ラグジュアリーブランドならこの3、4倍してもおかしくない・・・
というか、そもそもハンド箇所が多すぎて製造できないと思います。
世界的なブランドであればあるほど、一定数作らなければなりません。
そのため、過度なハンド箇所の採用は難しくなります。
各所の「手縫い感」が日本製にない魅力
Image Photo by RING JACKET
このコートは、ダブルフェイスの中でもでも「二重織」タイプで、手縫いステッチによる処理が一層の“ふらっと感”を演出しています。
あえて一枚襟(このラペルの大きさでは普通は二枚襟にします)で仕立て、少し首下がりを持たせることで緩さを出しています。
緻密で正確な縫製を得意とする「日本製」とはまた異なる、ハンド感あふれる仕立や縫製が「リングヂャケットナポリ」の魅力です。
Image Photo by RING JACKET
袖裏以外に裏地が付いていない「(ほぼ)一枚仕立て」。
裏側も同様に縫い代は内側に織り込んでおり、特別感ある一着にです。
Image Photo by RING JACKET
パッチポケットも、ナポリ仕立てらしいディテールです。
また、本水牛ボタンの中でも、あえて模様が目立つ大型のものを採用しているのもインパクトがありますね。
上質で軽量、そして暖かい
Image Photo by RING JACKET
そして、超上質なカシミヤ100%のダブルフェイス生地です。
しっとりとした柔らかさが、ダブルフェイスに最適です。
やはりダブルフェイスのコートには、しっとり感ある細いウールやカシミヤ素材が活きます。
「リングヂャケットマイスター」のハンドメイド感あるジャケットやスーツの上に羽織るも良し、カットソーやニット&デニムの上に着るも良しのコートです。
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【Q&A】ダブルフェイスコートの疑問に答える
ここでは、ダブルフェイスのコートに関する、よくある疑問にお答えします。
本当に寒くない?軽くて心許ない感じがするのだけれど・・・
ダブルフェイスのコートに関しては、稀に「寒い」という声を聴きます。
これに関しては、「頼りすぎ」「気持ちの問題」「コーデの問題」など、さまざまな理由が考えられます。
いくら通常のコートと比べて空気を含みやすい構造だからといっても、中が薄着過ぎれば当然寒いです。
当然、高フィルパワーのダウンコートと同レベルの暖かさもありません。
あくまで、「(正統派の方向で)ファッション性×高級感がある仕様の中で暖かい」と心得てください。
あるいは、軽さからヒラヒラしたり、オーバーサイズのコートも珍しくないので、
という心理的な不安から、寒さを感じる気がする場合もあります。
気分の問題も感じ方に影響を与えますし、あとは「冷気の通り道」を作ってしまうとやはり寒いです。
インナーにニットを着こんだり、首元はマフラーやストールでしっかりガードしてあげるなどの点は、通常のコートと変わりません。
ダブルフェイスコートの手入れ方法は?
Amazonより引用
ダブルフェイスコートの手入れ方法ですが、
- カシミヤ専用のブラシでブラッシング
- 生地に優しいクリーニング
は、心掛けたい点です。
カシミヤ並みに細い原毛を用いているコートであれば、ウールでも「カシミヤ用ブラシ」でブラッシングをした方が良いです。
また、万一の場合は最低限の応急処置を施した上で、無理せずに生地に優しいクリーニング(高級クリーニング)にお願いしましょう。
毎回クリーニングに出す必要はなく、着用後はブラッシングでほこりを落とし、風通しの良い場所に掛けて湿気を逃がすだけでも十分です。
あとは、良いウールやカシミヤは虫にとっても好物なので、防虫剤を活用し、保管場所の湿度が高くならないよう気を付けましょう。
ダブルフェイスのコートって、通常のコートよりどのくらい高額になる?
ダブルフェイスのコートは、同じ素材を使用した通常のコートと比べて1.5倍~2倍程度高額になることが一般的です。
理由としては、
- 「ハンドステッチ」など、機械化しにくい工程が多い・・・日本製やイタリア製などのコートはかなり高額になる
- 生地の製造や品質管理が厳しい・・・日本でも二重織を作れるファクトリーが減っている
- 生地自体の価格が高い・・・毛抜き合わせにする手間はもちろん、そもそもダブルフェイスの生地は厚みや特殊な織り方によって生地単価が高い
といったものが挙げられます。
セレクトショップの上級ラインが出す、良いウールを用いたダブルフェイスのコートで15万円程度はします。
そこから、いわゆるハイブランドのものであれば20、30、40・・・万円と、価格が上がってきます。
やっぱり、ダブルフェイスのコート>普通のコートなの?
そして、
やっぱり、ダブルフェイスのコートは格上なのか?
という点について。
この疑問に関しては、答えはNOだと思います。
「ハンドメイド感が好き」「やわらかく抜け感や温かみある印象を持たせたい場合」などは、ダブルフェイスのコートはオススメです。
一方、重厚で高耐久な装いである場合は、芯地や裏地が入ったツイードのコートなどが良い場合もあります。
ダブルフェイスのコートは間違いなく、服として生地から製造に至るまで非常に手間がかかるジャンルです。
しかし、通常の芯地や裏地付きコートとは、むしろ役割が違うと思います。
そして、先述の通りボンディング(しかも、大したウールじゃない)ダブルフェイスのコートは魅力が半減します。
全ては「狙っているスタイルの延長線上に、ダブルフェイスの強みが活きるか」だと思います。
変なダブルフェイスのコートを買うくらいなら、しっかりした良い仕立ての芯地&裏地付きコートの方が絶対に良いですよ。
ダブルフェイスコートはどこかで試せる?
そして、購入のハードルが高いダブルフェイスのコートを試すには、まずはレンタルしてみるのが良いと思います。
この記事をお読みいただいて、
と思った方は、上記記事で紹介している「アナザーアドレス」が良いと思います。
「アナザーアドレス」は、大手百貨店の大丸松坂屋が運営しているレンタルサブスクです(私も会員になっています)。
月額5,390円(税込)~で在庫にあるものなら好きな服を借りられますし、ダブルフェイスのコートも取り扱いがあるため、いきなり購入して失敗することが避けられます。
終わりに|ダブルフェイスは贅を尽くした生地
今回は以上です。
ダブルフェイスのコートは、“軽やかさ”と“暖かさ”を同時に味わいたい方にうってつけのアイテムです。
中でもカシミヤ素材を採用したものは、身体を包む極上の着心地とエレガントな雰囲気が魅力で、一度袖を通すとやめられない感覚になるかもしれません。
とはいえ、日本でもダブルフェイス生地を二重織で作れるファクトリーが減っており、最近はボンディングのダブルフェイスも多いです。
個人的には、「ダブルフェイス」という名前に価値を感じるあまり、廉価なダブルフェイスに手を出すべきではないとも思います。
その雰囲気が好きで、キチンと作られたものを手入れながら大切に着続けたい。
そんなお気に入りのコートがダブルフェイスであれば、何年も飽きずに愛用できる相棒になるコートになるのではないでしょうか。
おしまい!
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