・「洋服の青山」が提供する最高級ブランド、6万円台のスーツとは思えない柔らかい着心地
・サビルロウは英国調、ヒルトンはイタリア調のディテール
・お得に買える方法や、試着予約の手順なども詳細まで解説
こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。本日は「洋服の青山」の最高級ラインである、「サビルロウ(Savile Row)」と「ヒルトン(HILTON)」のスーツについて。
サビルロウとヒルトンはともに、6万円台で購入可能な既製スーツとしては最高峰のブランドです。
「洋服の青山」というメーカーに対して、ブランドという意識は持ちにくいかもしれません。しかし、柔らかな着心地に多様な体型に合わせられるサイズ展開を合わせた、隙のない構成です。
また、クオリティ面でも、20万円するハイブランドのスーツより高いことも見逃せません。
ブランド料マシマシ&人件費や広告費にコストを掛けているブランドとは、異なる訴求ポイントであることも特徴です。
スーツはサイズ感が合っていること、襟周りや肩、ウエストラインなどのフィッティングがカッコいい世界。そもそもブランドネームで「カッコいい」を決めるものではないのですね。
今回は、プロのファッションデザイナーである私しょるが、サビルロウ&ヒルトンの特徴や実物レビュー、効果的な選び方からどんな人に向いているのかまで、お伝えさせていただきます。
【青山】サビルロウとは?ヒルトンとは?|ブランドの特徴を解説
「洋服の青山」で取り扱われる最高級ブランド
Image Photo by 洋服の青山
サビルロウ&ヒルトンはともに、「洋服の青山」で展開される中で最高ランクのスーツブランド。
「洋服の青山のスーツ」というと、「安かろう悪かろう」というネガティブな印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、青山商事は「スーツ販売数世界一」を誇る企業。コストを抑えつつ良いスーツを作るノウハウに長けています。
サビルロウ|2002年設立、“技術の粋”を集めた英国調ブランド
Image Photo by 洋服の青山
サビルロウは2002年に始まったブランド。
ブランド名は、ロンドンの紳士服の聖地である“サヴィルロウ”に由来します。
まさしく青山の「サビルロウ」も、オーダーメイドの聖地である“サヴィルロウ”の着心地を既製服で実現することを目指したものでした。
「ドーメル」「ジョン・キャベンディッシュ」といった欧州の一流ミル/マーチャントが青山の製造技術を認めたことで、さらに1ランク、2ランク上の縫製技術と相まって誕生しました。
サビルロウは、長く三浦友和さんがイメージモデルを務めていることも相まって、特にご年配層や英国的なディテールが好きな人のためのブランドです。
一方、サビルロウは2022年に「コンテンポラリーライン」を発表しています。
これまでの年配層向けとは異なる、30代からの方も着やすいシルエットとなって登場しています。
ヒルトンほどイタリア感は苦手だけれど、レギュラーラインだと少し落ち着きを感じすぎる。コンテンポラリーラインは、そんな人にピッタリの塩梅です。
ヒルトン|イタリア「ベスティ・メンタ社」発のブランド
ヒルトンは、1960年代にイタリアの「ベスティ・メンタ社」が創業したブランド。元々はイタリアのスーツブランドです。
現在は、同じくイタリアのトンボリーニ社がブランド事業を受け継ぎ、2008年に青山商事が日本での独占販売契約を締結。
日本流通分は洋服の青山が手掛けているライセンスブランドです。
ちなみに、本国物よりも「日本のヒルトン」の方がクオリティが高いです。
YOOXなどでトンボリーニが提供している「ヒルトン」も購入可能ですが、ライセンスブランドの方が上という逆転現象が起きてしまっています。
ヒルトンはイタリアスーツ特有のディテールを落とし込み、スタイリッシュなスーツを提供していることが特徴。
重厚感がある英国調のサビルロウとは異なる、色気を感じさせるスーツが好きな人に向いています。
また、洋服の青山の「フレッシャーズorおじさんが着るスーツ」というイメージ像を崩していることも見逃せません。「30代から着られる、色気あるスタイリッシュなスーツ」というポジションを築き上げています。
ヒルトンは2008年の登場以来、累計150万着を売り上げたブランド。おじさんぽいスーツはまだ早いけれど、良い商品を作ることに注力しているブランドが好きな方にピッタリです。
また、スタイリッシュなご年配層にも幅広く愛されています。
その他、ヒルトンはプロ野球の「東北楽天ゴールデンイーグルス」「東京ヤクルトスワローズ」「オリックスバッファローズ」のオフィシャルスーツサプライヤーでもあります。選手たちが移動時に着用しているスーツはヒルトンのものです。
サビルロウ&ヒルトンのスーツは、具体的にどこが良いのか?
サビルロウ&ヒルトンが「具体的にどこが優れているのか」という点は、多くの方が気になると思います。
一般的なスーツとの違いは主に、
- 動きやすさ:首周りの吸いつきや肩回りの荷重分散、膝の曲げやすさ
- 高級感:高品質な生地によるドレープ感、副資材の高級感
- 豊富なサイズ感:体型×身長×好みに合わせた膨大なサイズ展開
など。
ヒルトンとサビルロウの共通点
実際にヒルトンもサビルロウも所有していたので、ディテールやシルエットの違いは把握しています。
また、現行品はヒルトン/サビルロウ共に、定価64,900円(税込)くらいが中心的な価格帯。
一般的に、スーツとしては決して安くはないと思います。
共通点も多いものの、生地やディテールが異なります。
今回紹介しているヒルトンは国産のウール100%生地ですが、その他にも、
- ヒルトン・・・「ゼニア」「グアベロ」「REDA」といったイタリア生地メーカー
- サビルロウ・・・「GUY DORMEUIL」「ジョン・キャベンディッシュ」などの英国系の生地
が中心です。
ヒルトン/サビルロウ共に襟は一枚襟ではないのですが、非常に柔らかなフィッティングです。
既成スーツには珍しく首周りも面で当たるように吸いつくため、肩に荷重する分が首~背中にかけてキチンと体重が乗って軽く感じます。
結果として、肩がこりにくい“疲れないスーツ”になってくれます。個人的にはここだけでも、廉価なスーツ数着分の価値があると思う部分です。
裏返すと、台場仕立てであることが分かります。ハンドメイド率の高い、イタリア系のスーツによく採用されている仕様です。
ヒルトンはもちろん、英国式がベースのサビルロウにも採用されています。
また、ウエストには力ボタンが採用されています。生地に負荷がかからないようにするための、裏にある補強用のボタンです。
こういった配慮も、日常使いには嬉しいですね。
ちなみに、ボタンの素材に関しても、サビルロウは本水牛ボタン。ヒルトンの場合はナットボタン(南米で採れるタグアヤシの実を削って作り出すボタン)を使用しています。
サビルロウもヒルトンも、アームホールの身頃側と袖側の形状を変えています。
また、肩周りの裏地はまつり縫い。袖付けと合わせて、腕を動かしても硬さを感じさせません。
さらに、アームホールが“そら豆型”の鎌浅仕様で、肩を動かし易いジャケットになっています。ここも品質の低いスーツとは異なる、手間の掛かった部分です。
その他、サビルロウ&ヒルトンはパンツの出来もかなり良いです。
例えば、ウエストの前から腰の中心部に向かって「上がり」があります。
これは、膝を曲げたり、座った際に違いを感じられる部分。
人間は歩行時や着座の際に臀部と膝が張り出すため、パンツが全体的に引っ張られます。
その際、この「上がり」があることで、引っ張られる力に対応して後ろ部分のウエストが腰を包み、膝が曲げやすくなるのですね。
“上がり”くらい廉価なパンツでも採用できそうと思われがちですが、パターンに曲線が多くなると裁断や縫い合わせも手間が掛かり、工賃が上がります。
現に、ユニクロの「感動パンツ」などは、真っすぐ切って縫って、それを生地のストレッチ性で何とか膝の曲がりや座った際に対応しているパンツ。
だからこそ、3,990円というプライスで提供できています。
「感動パンツ」はその分、直立した際にお尻の下もブカブカでウエストベルトの中にあるドローコードや、ベルトを締めないと“落ちてくる”不安があります。
また、生地もぐいんぐいん伸びるので高級感はありません(その分、洗える&自転車通勤などにはとても良いですけれども!)。
【サイズ感】その他、サビルロウとヒルトンの異なる点【ディテール】
その他、サヴィルロウとヒルトンの違いとしては、
- サビルロウは芯地が厚め/ヒルトンは軽め
- ヒルトンは最初から本切羽仕様
- スリム度は、ヒルトン>サビルロウ(コンテンポラリーライン)
といったところ。
実際は同じメーカーのブランド&同価格帯なので、基本的な作りは大きな差はありません。
しかし、ブランドの方向性に沿って、キチンと裁断から生地メーカー、副資材に至るまで変えている点は流石です。
サビルロウの方がやや重厚
サビルロウは生地そのものが重めというわけではないのですが、中に入っている芯地がヒルトンよりもしっかりとしています。
好みの問題でもありますが、重厚感や安定した着心地が好きな方はサビルロウがオススメです。
英国式とイタリア式のスーツにおける主な雰囲気の違いは、こちらで解説しています。
ご自身の体型やイメージの好みに合わせて、気になったものを選んでみてください。
ヒルトンは最初から本切羽仕様
大きな仕様の違いとして、ヒルトンは最初から「本切羽」仕様になっています。既製スーツにおいて袖のボタンは飾りである場合が多いのですが、ボタンホールの穴が開けられています。
しかし、最初から本切羽ということは、袖丈を伸ばしたり短くすることが困難です。
実際はできなくもないのですが、明らかにおかしくなります。
一方、サビルロウは「開き見せ」仕様といって、ボタンホールが開いていない飾りステッチが縫われています。
修理して本切羽にすることも可能ですが、(メスを入れて穴を開けるので)基本的に逆はできません。
そもそもサイズ展開が豊富&合った袖丈を用意してくれるのであまり該当する人は多くないものの、要は、体型に対して極端に腕が長いor短い人はサビルロウ一択です。
「タイトさ」はヒルトン>サビルロウ
また、シルエットに関しては、ヒルトンのA体スーツでユニクロのストレッチウールジャケット(スリムフィット)と同程度。
サビルロウのコンテンポラリーラインで、ヒルトンのレギュラーフィットと同レベルのサイズ感です。
サビルロウのレギュラーラインは、ユニクロのレギュラーフィットよりも気持ち大きめ。ゆったりとしたスーツが好きという方向けです。
サビルロウ&ヒルトンのメリット/デメリット
次に、サビルロウとヒルトンのメリット&デメリットについて。基本的には、実際に自分で買っているくらいなのでオススメできるブランドです。
私目線でも、日々のビジネスシーン使いたくなるような良ブランドであることは間違いありません。
もちろん、既製服なので人によって合う/合わないはあります。そこで、ここではサビルロウ&ヒルトンの良い点・イマイチな点についてご紹介します。
メリット① :圧倒的なコストパフォーマンス
サビルロウ&ヒルトンのメリットは、何と言っても「最強の6万円台スーツ」という点。
サビルロウとヒルトンは、一般的なスーツとは一線を画す柔らかな着心地です。
マシンメイドながら、中間プレスやミシン縫いでも優しく縫い付けられることで、着心地の良いスーツを提供しています。
多くの既成スーツは、コストを抑えて出来上がるスピードを確保ためにコスト重視の作りになっています。
そのため、首周りや肩周りまでミシンで“ガチャ縫い”して、硬い着心地になっている場合がほとんどです。
その他、生地や縫製、ボタンなどの副資材も安っぽくないため、オールラウンドに隙のない優秀なブランドです。
メリット②:サイズ展開の豊富さ
また、サビルロウとヒルトンは、さまざまな体型に合ったサイズ展開の豊富さも特徴です。
その分、あなたにピッタリのサイズを見つけ出しやすくなっていることも◎。
例えば、標準体型である「A体」を中心に、がっしりめの「AB体」や「B体」、ヒルトンの場合は痩せ型の「Y体」も充実しています。身長に関しても160cm(3号)から180cm(7号)まで5段階のサイズ展開があります。
さらに、同サイズ表記の中でも「レギュラーライン」「コンテンポラリーライン」を設けることで、一層あなたに合ったフィッティングを選ぶことが可能です。
ちなみに、サイズ展開の選び方は、
YA体 | 3号 | 4号 | 5号 | 6号 | 7号 | 8号 |
---|---|---|---|---|---|---|
身長 | 160 | 165 | 170 | 175 | 180 | 185 |
胸囲 | 86 | 88 | 90 | 92 | 94 | 96 |
胴囲 | 72 | 74 | 76 | 78 | 80 | 82 |
A体 | 3号 | 4号 | 5号 | 6号 | 7号 | 8号 |
---|---|---|---|---|---|---|
身長 | 160 | 165 | 170 | 175 | 180 | 185 |
胸囲 | 88 | 90 | 92 | 94 | 96 | 98 |
胴囲 | 76 | 78 | 80 | 82 | 84 | 86 |
AB体 | 3号 | 4号 | 5号 | 6号 | 7号 | 8号 |
---|---|---|---|---|---|---|
身長 | 160 | 165 | 170 | 175 | 180 | 185 |
胸囲 | 92 | 94 | 96 | 98 | 100 | 102 |
胴囲 | 82 | 84 | 86 | 88 | 90 | 92 |
BB体 | 3号 | 4号 | 5号 | 6号 | 7号 | 8号 |
---|---|---|---|---|---|---|
身長 | 160 | 165 | 170 | 175 | 180 | 185 |
胸囲 | 96 | 98 | 100 | 102 | 104 | 106 |
胴囲 | 90 | 92 | 94 | 96 | 98 | 100 |
となっています。
もちろん、「身長くらいは把握しているけれど、胸囲などは自分ではわかりにくい」という方、どうしてもイメージ的に好きなれないという方もいらっしゃると思います。
その場合、後述の代替手段と合わせて検討すると良いと思います。
デメリット:やはりブランドイメージ
「サビルロウ」「ヒルトン」の唯一とも言って良い欠点は、やはり「洋服の青山」という点にネガティブなイメージを持つ人がいること。
少なくとも「良いスーツ」という点では、非常にオススメできるブランドであることは間違いありません。
「モノとしてブランド物を凌駕するスーツが良い」という価値観の人には、非常に合っていると思います。
しかし、例えば「ヒューゴボス」や「ポールスミス」といったブランドネームはないかもしれません。
「ブランド」という分野では、まだまだこれからに期待するフェーズです。
もっとカッコいいイメージの良いスーツブランドは?
青山のブランドイメージがどうしても好きになれない・・・
自分に合うサイズ感がどうしても分からない・・・
ここまでお読みいただいて、そう感じられる方もいらっしゃると思います。
そんな方にオススメなのが、上記記事にて解説しているKASHIYAMAというブランド。
KASHIYAMAであれば、価格帯もヒルトン/サビルロウと同程度で、サイズミスの心配を失くせます。
大手アパレルメーカー「オンワード樫山」が展開する社名を関するブランドで、オンラインから予約して全国に多数構える店舗で採寸できます。
店員さんと話し合いながら生地や副資材、仕様を選べますし、注文後1週間で手元に届くというスピード感も魅力です。
もちろん、生地から副資材、ディテールまで指定できて、ヒルトンやサビルロウに負けないスーツにできます。
\ オーダースーツの作成はこちらから/
最後に|サビルロウ&ヒルトンの購入方法!どこで買うのがお得?
最後に、サビルロウとヒルトンの購入方法について。
「洋服の青山」公式HPか、楽天市場などで購入可能
サビルロウ&ヒルトンのスーツは「洋服の青山」公式オンラインストアか、楽天市場などで購入可能。
それぞれの特徴としては、
- どちらもサイズ感が最も豊富
- 公式オンラインは「まとめ買いセール(2着目20%OFF)」「店頭試着予約」が可能
- 楽天市場は、セール価格やポイント重視の人に◎
といったところ。
まとめて購入するなら公式オンライン、サイズが分かっている単品買いなら楽天市場が良いと思います。
サイズが分かりにくいという方にとっては、先述のKASHIYAMAなどと合わせて検討してみてくださいね。
ヒルトンの年齢層は?大学生や20代でも似合う?
圧倒的に価格対クオリティに優れるヒルトン。だからこそ、価格的に30代〜のブランドと思われる節があります。
20代がヒルトンのスーツを着る場合、無地やシャドーストライプなどのベーシックな柄がオススメです。
あるいは、先述のカシヤマ(KASHIYAMA)の方が、20代向けとは言えると思います。
とはいえ、服のエイジレス化が進み、例えばユニクロなどでも「◯◯代向け」といったくくり方はできない時代です。
スーツもサイズ感が合ってるか否か、上質感があるか否かが重要な指標です。
あまり「自分は何歳だから・・・」というような価値基準で選ぶものでないことは確かです。
今回は以上です。
サビルロウとヒルトンは、6万円台最強の既成スーツ。
ブランドイメージこそ“あこがれ度”の強いものではないかもしれません。しかし、それ以外のできることは全てやっている超優等生です。
また、サビルロウとヒルトン、それぞれシルエットや体型別に展開されているのも強みです。
特徴やターゲットも異なるので、多くが当てはまるスーツが見つかるのではないでしょうか。
ブランドネームよりも実を取り、人よりもお洒落に思われたい方へ。6万円台の価格帯で良いスーツが欲しければ、オススメできるブランドですよ。
おしまい!
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