こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。本日は、ユニクロのイタリアンレザーベルトについて。
イタリアンレザーベルトは、ユニクロの中でもかなりのロングセラー商品。
私が学生時代(十数年前)から確かにありましたし、当時からあまり変化のない商品だとも思います。私もカジュアル用を中心に、何度か購入しました。
そして、2,990円というプライスを考えれば、(サイズさえ合えば)比肩する商品のないレザーベルトです。
5,000円出してもユニクロに負けているベルトは沢山あるので、生半可なベルトならユニクロでOKと言えるのではないでしょうか。
一方、完全無欠のベルトかと言えば、当然そんなことはありません。
安い理由もキチンとありますし、ユニクロがプッシュするような“本革の風合い”を重視する人にとっては、「ちょっと待った!」と言う部分がある商品でもあります。
「本革らしい、味わい深い本格を。」と店内のポップにも表記されています。
しかし、正直、革の素材を活かすという点に対しては、そこまで“本格的”な商品ではありません。
言うなれば「ステーキこそ肉」だと期待するなら、だいぶ加工されたソーセージを出して「本格的な肉です!」と言っているような商品だと思ってください(嘘ではないですし、それはそれで美味しいですが!)。
というわけで本日は、プロのファッションデザイナーにして革マニアの私しょるがイタリアンレザーベルトをレビュー。
安い部分の理由や細部まで紹介します!
ユニクロのイタリアンレザーベルトとは?特徴を解説
まずは、ユニクロのイタリアンレザーベルトに関する特徴を解説します。
改めてになる部分が多いものの、革製品の基礎知識も含めてご紹介させていただきます。
「伊オーソニア社」の本革を使用したベルト
イタリアンレザーベルト最大の特徴は、なんと言っても本革のベルトであること。
伊トスカーナにあるタンナーである、オーソニア社の鞣(なめ)したレザーを使用しています。
イタリアンレザーベルトの場合、原皮から鞣しにかけてイタリアで調達&加工を中国やインドで行っています。
(その加工によって革製品らしさが失われていますが)その分低コストで提供されています。
「タンニン鞣し」で鞣されたレザーを使用
また、ユニクロのイタリアンレザーベルトは、「タンニン鞣し」によって鞣された革を用いています。
動物(主に牛)の“皮”を、硬化したり腐ったりしないよう“革”にする工程を「鞣(なめ)し」と言います。
そして、革の鞣し方は主に、
- クロム鞣し
- タンニン鞣し
- コンビ鞣し
の3種類があります。
(細かく解説するのは別の機会に設けるとして)かいつまんで言うと、タンニン鞣しは、比較的自然な革の風合いになる&鞣す工場も化学物質が含まれた廃液が少なくて済む製法。
コストも(どちらかと言うと)クロム鞣しより高くなる場合が多いです。
一方、そのままの場合は相対的に水に弱く、扱いがやや難しい革になります。
しかし、ユニクロのイタリアンレザーベルトは、良い意味でも悪い意味でもめちゃくちゃ安定した品質の商品。
理由は後述で解説しますが、このアンバランスさと“らしさ”を活かさない点も、ユニクロらしいと思います。
ビジネス用からカジュアルまで幅広く取り扱い
また、ユニクロのベルトは、ビジネス用からカジュアル用まで幅広いラインナップを揃えています。
特に、上記の写真1枚目にあるメッシュベルトは有名な商品。
ユニクロのベルトにおける欠点である、サイズ調整の不自由さも(ある程度)対応できる優秀な商品です。
また、カジュアルベルトも充実しています。近年はレディースのベルトもかなり豊富なので、ぜひチェックしてみてください。
【プロが評価】実際にイタリアンレザーステッチベルトをレビューしてみた
私物で分解してしまったものが家にあるのですが、改めて「イタリアンレザーステッチベルト」をのレビューしようと思います。
定価は2,990円。非常にリーズナブルなベルトだと思います。
5,000円くらい出せば他メーカーでも本革のベルトは手に入りますが、やはり圧倒的なコストパフォーマンス&十分過ぎるほど安いと思いました。
高級なベルトと比較すると「本革を活かした表情による高級感」「バックルのメッキ処理」などの差はあるものの、価格差を考えれば健闘しています。
色は「顔料仕上げ」による染色
まず、ユニクロのベルトは「顔料仕上げ」(いわゆるペンキ塗り)による、表面的な着色であるということ。
革に色を付けるには、主に繊維の中まで色を染み込ませる「染料」と、革の表面に色を乗せる「顔料」の2種類があります。
ユニクロのベルトの場合、「顔料仕上げ」によって色が“乗せられている”ことが特徴。
「顔料仕上げ」は、
- より均一で安定した品質の革になる
- 水染みや色移りなどのトラブルに強い
- 革の表情や奥行きはあまり感じさせない
といった特徴があります。
「染料仕上げ」と「顔料仕上げ」は、優劣の問題ではありません。
染料仕上げは浸透性、顔料仕上げは着色性に優れるため、実際に併用されることも多いものです。
しかし、本革の表情を活かすためには、染料の比率が高い方が良いことは事実です。表面を削り、革をペンキ塗りしてしまうと革本来の血筋やシワなどの表情も失われてしまうため、「本革だけれど整いすぎている」な表情になってしまうことも。
そして、他の方のブログの中で、ユニクロのイタリアンレザーベルトを使用していると「革がひび割れ」「色落ち」がする、といった言及が多いです。
これは、顔料(ペンキ)仕上げの表面に乗っている塗料が剥がれていることで、“革がひび割れている”という解釈をされている方が多いことが原因。
ユニクロのイタリアンレザーベルトの場合、総じて使用されている革そのものはヤワではありません。しかし、屈曲や引っ張られる部分が多く、その力も強いベルトの場合、顔料仕上げだとどうしても塗装が割れやすいのですね。
その他「革靴は5足ローテしているけれどベルトは(見られないし)毎日同じものを使っている」という方も多く見受けられました。
これは、上記の理由で寿命を縮めてしまうのでNGですよ。ユニクロに限らず、どんなベルトでも半年や1年そこいらでダメになります。
本革を使用しているが、表面をめちゃくちゃ整えている
では、なぜ「染料」ではなく「顔料」でバキバキに化粧して表情を消しているのか。
これは、使用している牛革が、かなり大人の牛のものを使用していることが理由。
成牛の革であることは、革繊維の大きさや厚みからも明らかです。
人間の「赤ちゃん肌」と同様に、牛も生まれたころの肌が一番キメが細かく、傷も少ないため綺麗で高価とされています。
一方、廉価な成牛の革は毛穴や傷、シワ、血管の跡、虫刺されの跡などが目立つため、革靴の中底やソールなどに使用されることがほとんどです。
(私のようなおじさんの革はソール行きです。)
しかし、ユニクロの場合は採れる面積が少なく、食用としても珍しい仔牛のレザーはコスト的に採用できません。
そのため、表面を削って均一にした上で、革の表情が残る染料ではなく顔料で“化粧”することでコストダウンを実現しています。
ステッチは丁寧だが、化繊糸は若干気になる
イタリアンレザーベルトに掛けられたステッチは、非常に細かく丁寧に掛けられています。
一方、使用されているステッチ糸はコストの関係上、ポリエステル糸&ミシンでガチャ縫いされていますが、ここは仕方ないところ。
「良いベルト」は、麻糸に蝋を塗った糸などが手縫いで縫われています。
手間暇かけられて作られたベルトはステッチ糸がふっくらとして高級感がある上に、ミシン糸よりも解けにくい点がメリット。
他の方の身に付けられているベルトをまじまじと見る機会はそこまでないですが、「分かる人は分かる」部分の差です。
分厚い革を使用しているため、芯地は省略されている
そして、切断したイタリアンレザーベルトの断面がこちら。
革本来のベージュの色が残っていることからも、革の内部まで色が染み込んでおらず、表面だけ着色されていることが分かります。
また、ベルトにかなり厚い成牛の革を用いているため、中に芯地が入っていません。
ここは高級なベルトは中に革芯、廉価なものは化学繊維の芯が入っていることが多くなっています。
しかし、イタリアンレザーステッチベルトの場合、芯地を挟み込んで張り合わせる工程そのものを省略しています。ここも工数を省略し、コストカットを実現している部分。
ちなみに、ベルトの芯地を入れた構造は「フェザー合わせ」という仕様などが一般的。
上記写真の場合、真ん中のダークグレーの層が芯地になっています。
芯地を表面の革で包み込んでから裏側の革と合わせ、ステッチを掛けるのがオーソドックスな仕様。
その他、疑問に答える|サイズ調整や長すぎ問題、穴あけに対して思うこと
【ユニクロのベルト】基本的にサイズ調整はできない
まず、多くの方が疑問を抱く点として、ユニクロのベルトはサイズ調整が難しいということ。
ユニクロのベルトはサイズ調節可能なベルトと異なり、金属パーツを外して余った部分をカットができません。
そのため、ご自身のウエストサイズに合わせた調整方法は用意されていない点に注意。
もちろん、専用の工具がある×手先の器用な方であれば調節することは可能です。
職人であれば当然可能ですが、基本的に普通の人ではできないと思っていただいてOKです。
店頭で無料で穴あけ可能!しかし・・・
Image Photo by GU
一方、ユニクロは一部店舗に持ち込むことで、無料でベルトの穴あけサービスが行われています。
しかし、カジュアル用のベルトならそれでOKですが、ビジネス用のベルトに関しては本質的な解決策になりません。
というのも、ビジネス用のベルトは複数ある穴の中で、真ん中にあるものを使用することがドレスコードとなっています。結局、長すぎるといって穴を開けても、ベルトの先端が余りまくっていたら格好悪いわけです。
特に、私のようにスーツの48サイズが合うくらいの方(ウエストの実寸が80~85cmくらい)は、ユニクロのベルトはMサイズだと若干小さく、Lサイズだと大きいと思います。
各サイズの間にある方は、潔くユニクロのベルトは諦めましょう。
「サイズが合わない人」が買うべきベルトはこちら
というわけで、ユニクロのベルトはサイズが合わない人が、無理して買ってまで使うべき商品ではありません。
ビジネス用のベルトは、キチンと真ん中の穴を使えるものをチョイスしましょう。
上記記事で紹介しているような、カットしてサイズ調整可能なベルトを探すと良いですよ。
あるいは、クオリティ面ではそこまで期待できないものの、GUの「ベジタブルタンドレザーサイドステッチベルト(アジャスタブル)」であれば、1,990円という価格で本革&サイズ調整可能なベルトも手に入ります。
終わりに|2,990円と考えれば奇跡的だが、安い理由もキチンとある
今回は以上です。
ユニクロのイタリアンレザーベルトは、本革を使用しつつ、よく加工することで均質なクオリティを再現したプロダクト。
2,990円という価格ながら本革という付加価値を提供しつつ、大量生産を可能にしている工夫に満ち溢れた商品です。
確かに、素材の良さをそのまま生かした、「一枚板のテーブル」のような芸当はできないクオリティではあります。
人によって「ペンキ塗り」や化学繊維の糸をミシンでガチャ縫い、革本来の表情が残っているか否かなどで「許せる」度合いが変わると思います。
しかし、革マニア的には物足りない商品であることも間違いないでしょう。
とはいえ、新品やそこまで酷使していない状態でのパッと見は悪くないですし、ユニクロという企業が提供するベルトとしては、十分合格点をあげられるベルトだと思いました。
その上、革というカテゴリー自体、そもそも加工しなければ使い物になりません。
原皮のままでは(人間のかさぶたのように)硬化してしまったり、腐ってしまったりするからこそ、“鞣し”という「加工」方法が発明されました。
価格を納得させるコストのカットの仕方、大量生産に向いた作り方をしている点は、もっと評価されても良いかもしれませんね。
おしまい!
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