エアリズムの仕組みとデメリット|暑く感じる?繊維構造に通じたプロが、メカニズムから対策まで解説
こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。
「エアリズムを着ているのに涼しくない」「むしろ暑く感じる」という声を耳にします。
ユニクロの高機能インナー「エアリズム」は蒸し暑い夏の大定番と思われている商品であり、本来、汗を素早く処理して快適な着心地を提供する設計のはずです。
それにも関わらず暑く感じる原因は何か、気になる方が多いと思います。

そこで本記事では繊維構造に詳しいプロの視点からエアリズムの仕組みとデメリットを分析し、対策まで論理的に解説します。
エアリズムが持つ独自のメカニズムを理解し、弱点を踏まえた上手な活用法を見極めましょう。
エアリズムの仕組み|なぜ涼しく感じるとされているのか?
エアリズムは、化学繊維であるポリエステルを主体とした素材でできています。
一般にポリエステル繊維の公定水分率(20℃・湿度65%環境で繊維内に保持される水分割合)は約0.4%程度と極めて低く、繊維自体はほとんど水分を吸収しません。
しかし、ユニクロは東レと共同開発した極細ポリエステル繊維を採用し、この弱点を克服していることをアピールしてます。
具体的には、髪の毛の数百分の一という超極細のフィラメントを束ねて糸にすることで繊維同士の間に微細な隙間が生まれ、そこに汗を引き込む毛細管現象(キャピラリー作用)が働きます。
その結果、吸水性の低いポリエステル素材でも汗を肌からすばやく吸い上げて生地全体に拡散させることが可能になっている、という論理です。
こうして衣服内に取り込まれた汗は生地表面へ移動しつつ蒸発し、気化熱(蒸発潜熱)によって肌から熱を奪います。
この蒸発冷却効果により、エアリズム着用時は汗が乾く際に綿素材の約2.4倍もの熱量が放出され、より涼しく感じることが実験で確かめられています。
また、生地は薄手で空気を通しやすく通気性にも優れるため、衣服内に熱や湿気を溜めにくいという利点もあります。
さらにエアリズム生地自体もシルクのように滑らかで接触冷感(肌に触れるとひんやり感じる)機能を備えており、汗によるベタつきを抑えつつ肌に冷たい感触を与えてくれます。

抗菌防臭やストレッチ性も含め、これらの機能が組み合わさることで「まるで着ていないかのような」快適さと涼感を生み出している・・・とされているのです。
エアリズムは暑く感じる?その理由と背景
エアリズムは論理的、実験的に「涼しい」とされる素材ですが、実際に「暑い」と感じている人が多い理由は主に以下の通りです。
- 汗の量が多いと速乾性能に限界がある
- フィット感の好みと通気性による体感差
- 経年劣化による機能低下
特に、一番上の汗をかきすぎる場面で性能を発揮できないという点が、「暑い」を感じさせる主原因。
次に密着する着心地の善し悪しです。タイトなフィット感が肌に摩擦少なく快適さをもたらす反面、人によっては窮屈に感じてしまい、心理的に暑さを感じる一因となります。
また経年による性能劣化も無視できません。生地の伸びや繊維の疲労により吸汗速乾・接触冷感といった機能は徐々に低下していきます。

総じてエアリズムは優れた機能性インナーですが、「万能」ではなく使用環境や個人差によってはデメリットが現れることを理解しておく必要があります。
実験では涼しいはずなのに、実際に汗をかく真夏の場面で対応しきれていない、まさに現実との乖離を生じさせる原因になっています。
汗の量が多いと速乾性能に限界がある
エアリズム最大の特徴である吸汗速乾は、発汗量が適度な範囲でこそ効果を発揮します。
汗をかきすぎる状況では、いくらエアリズムが汗を素早く拡散・蒸発させても処理が追いつかず、生地が乾くスピードよりも汗の供給量が上回ってしまいます。
繊維の隙間が汗で満たされてしまうと毛細管現象も十分機能しなくなり、蒸発が追いつかなくなるのです。
特に、炎天下で長時間運動するような場面では、エアリズムを着ていても肌が汗で濡れ続け、涼しさを感じられなくなるでしょう。
同様に、真夏の高湿度環境では空気中に湿気が飽和して汗の蒸発が遅くなるため、エアリズムの速乾機能による冷却効果も十分に発揮されません。
つまり、エアリズムは汗処理能力に優れるものの「汗の量」と「周囲の湿度」には物理的な限界があり、その限界点も低い点に注意が必要です。
フィット感の好みと通気性による体感差
エアリズムのインナーウェアは、肌に密着するタイトなフィット感で設計されています。
伸縮性の高い素材で圧迫感を抑えてはいるものの、普段からゆったりした服を好む人にとっては、この密着感と化学繊維の熱を持っている感が「暑苦しい」と感じられる場合があります。

とはいえ、逆に、エアリズムコットンオーバーサイズTのように、大きめサイズでゆるく着用する商品の場合、生地が肌から離れすぎ&先述の吸い上げる量の少なさで汗を十分に吸い取れません。
この場合も、汗が肌表面に滞留してムレや臭いの原因となりかねません。
したがって、
- 密着していたらしていたで、汗をかきすぎた場合や化学繊維生地が苦手な人は不快
- 適切なサイズで着用しないとエアリズム本来の通気性・速乾性が活きず、体感温度が上昇する
という、二重の「暑い」となる恐れがあります。

着用者の感覚や好みや着方によっても変わりますが、エアリズムの快適性能に差が出る点はデメリットと言えるでしょう。
経年劣化による機能低下
素材そのものの経年劣化も、エアリズムが暑く感じる一因となり得ます。
特に、エアリズムには伸縮素材のポリウレタンも含まれており、着用と洗濯を繰り返すうちに生地が伸びヨレてフィット感が損なわれると、汗を吸い上げ拡散させるドライ機能が100%発揮できなくなります。

見た目に異常がなくても性能面では少しずつ弱っていくため、エアリズムは定期的に新しいモデルへ買い替える「非エコ」な衣類でもあります。
暑く感じるだけじゃない、エアリズムのデメリット
さらに、「暑く感じる」以外のデメリットも存在します。
具体的には、
- 汗が残り続ける場合、不衛生で臭う
- 油をとにかく吸う、皮脂汚れの黄ばみにも弱い
- 化学繊維に弱い肌質の人は要注意
という点。
汗を吸いにくい服で汗が肌に残り続けると不衛生であるということは、多くの人が実感するところでしょう。
また、生地繊維が細かい分、油を吸うと洗濯してもそうは落ちません。
そして、化学繊維が肌との摩擦で肌荒れやかゆみが出てしまう人は要注意です。
汗が残り続ける場合、不衛生で臭う
エアリズムの場合、毛細管現象で吸い上げられない汗は、身体に残ったまま纏わり続けます。
綿100%のインナーである場合は、身体の汗が毛細管現象で吸い上げられない状況になっても、(公定水分率が8.5ある)綿自体が汗を吸ってくれます。
しかし、エアリズムの場合、公定水分率が0.4のポリエステル&1.0のポリウレタンです。毛細管現象がいっぱいいっぱいになると、もはや汗が行き場を失い、雑菌が繁殖しやすくなって「臭い」となるのです。

もちろん、綿100%のインナーでも、繊維が水を含んだまま放置することは良いとは言えません。
汗冷えもしますので、エアリズムでも綿100のインナーでも、こまめに汗を拭きとることは重要です。
しかし、日常の生活において、いつでも汗を拭ける環境にあることは稀だと思います。そのため、直接身体に纏わりついたまま放置される繊維構造の方が、より不衛生であることは間違いありません。
ちなみに、エアリズムの中で「抗菌・防臭機能あり」と表示されているものは、ライオン株式会社が特許を持つ「ライオナイトPC」という素材が用いらています。
ライオナイトPCは、 光が当たると消臭効果が持続する性質を持ちます。
そのため、エアリズムの場合は天日干しして消臭・殺菌しましょう。
油をとにかく吸う、皮脂汚れの黄ばみにも弱い
そして、見逃せないエアリズムの欠点としては、油汚れに非常に弱いという点。
油が跳ねて付着すると、何回洗濯をしても落ちません。
いやもうね、本当に笑っちゃうくらい落ちないですよ。皆さんも私のように、エアリズムコットンオーバーサイズTシャツを着て、もんじゃ屋さんに行けば理解できます。

毛細管現象によって繊維の奥まで油が吸い上げられてしまうため、洗濯機を1回、2回程度、回したくらいでは全く落ちないレベルです。
もんじゃは特殊な例かもしれませんが、例えば皮脂やベースメーク、日焼け止めなどでも同様の事象が起こり得ます。
あるいは、新シーズンになって、クローゼットから去年のエアリズムを引き出してみると、黄ばんでいて汚いと感じる経験をした人もいらっしゃるでしょう。
これは、着用している間に皮脂汚れを吸い上げ、洗濯しても繊維の奥まで入り込んでいるため落とせず、保管している内に酸化して黄ばんだものです。

ちなみに、エアリズムは柔軟剤もやめた方が良いです。
柔軟剤のコーティング機能で汚れごと包んでしまうので、余計に汚れが落ちにくく、匂いと臭いのハーモニーが生まれてしまいます。
化学繊維に弱い肌質の人は要注意
最後に、いわゆる化学繊維が合わない「化繊負け」という欠点です。
これは肌によっては(ほとんど)起こらない人もいらっしゃいますが、少なくとも、乾燥肌・敏感肌と言われる人はエアリズムをやめた方が良いです。
「化繊負け」と言っても原因はいくつか存在します。代表的なのが「汗かぶれ」でしょう。
先述の通り、エアリズムは毛細管現象で汗を吸い上げる量が限られているため、やがて身体に汗が溜まります。
すると、汗に含まれる塩分やアンモニアによって、皮膚がかぶれてしまいます。
特に、インナーやTシャツを着ていて、摩擦を受けやすい箇所は要注意です。
- 首周り
- 脇の下
- お腹の周囲
- 肘の内側
あたりが「かゆい」「ヒリヒリする」「荒れている」という人は要注意です。
エアリズムに限らないことではありますが、Tシャツの素材と汗の関係性を一度、見つめ直してください。

もっと言うと、皮膚炎が起こって患部に熱を持っている場合、それだけで「熱い」はずです。
インナー選びの前に肌を健康な状況に整えること、あとは肌のことを考えると、やはり綿100%の方が適しています。
まとめ|エアリズムは恩恵にあずかれる範囲が限られる
今回は以上です。
エアリズムは、少なくともメカニズムとして「涼しい」ことは確かですが、紹介してきたようにちゃんとデメリットもたくさんあります。
「暑い」と感じる環境に関しても、その他の「デメリット」に関しても、大量の汗をかく環境においては要注意です。
しかも、素材の特性上、合成繊維の欠点をカバーするために光触媒の防臭機能を添加するのだけれど、光でポリウレタンが劣化して・・・というような、正直よく分からない構造になっています。
「サラッと感と涼しい」というイメージを持ったエポックメイキングなインナーを作るために、その裏で多くの機能を犠牲にしている素材だと思います。
いずれにせよ、私たちはさまざまな条件を総合して、快適かどうかを判断します。
それは温度だけでなく湿度や吸湿性、肌との相性など。
総合的な判断に依って、「良い」か「悪い」か、ひいては「涼しい」「暑い」を判断しているのです。
そして最後に、エアリズムを着ても良い人について。
これは、
- 皮膚炎なんてならないし、肌の乾燥とも無縁な人
- 毎年Tシャツやインナーを刷新して、どんどん捨てられる人
- 汗ジミが気になって気になって仕方がなく、暑いとか涼しいとかよりも優先したい人
などが考えられます。
そもそも、「肌が弱い人」や「同じ服を何年も愛着を沸かせて着たい人」は不向きな素材です。
それはつまり、肌が強い人や、どんどん買い替えて新しいモノを優先する人であれば、良い商品だと思います。

あとは、「そんな汗なんか拭きとれないし、デートや仕事で脇汗がシャツに染み出るよりはマシ!」というのであれば、「まあ、気持ちは分からなくないのでどうぞ・・・」といった感じです。
「総合点」においては、エアリズムは決して夏にピッタリの素材ではないと、私は思います。
身体の汗を吸い取らないのでベタ付きますし、汗を大量にかいたら気化熱よりもデメリットが大きいです。
店頭で販売される分には綺麗ですが、実際に着用すると、油汚れが繊維に詰まって、あまり清潔感を感じられない素材でもあります。
そして、化学繊維の摩擦や吸湿性の低さによって、多くの乾燥・敏感肌の方にとって“かぶれやすい”です。
皮膚炎が起きたら、それこそ「熱い」ですからね。
エアリズムは寧ろ、そこまで汗をかかない春先や秋口の方が効果を感じやすいと思います。気温にして22、3℃程度でしょうか。
その方がサラッとした生地感が心地よく、「涼しい」と思える人が多いのではないでしょうか。
究極的な話をすると、日本の多くの地域における真夏はもはや、何着ても暑いです。
ただし、暑くて汗をかく中でも、ベストな対策は異なります。
真夏の服装については、下記も参考にしてくださいね。
おしまい!
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